オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Saturday, August 06, 2005

オリガルヒ追っかけの末に

ずっと更新してない。とても、悲しい。だけど、「ブログしたからって、何?」みたいな感じになっちゃってるし、どうしようもないわ。熱が冷めちゃうと続けられない。それに、こうやって書きつづけることに意味を見出せない。

今日は、アブラモビッチのヨットのことをいろいろ追った。
ここにも書いてきたように、ペロラス、ラ・グラン・ブルー、エクスタシーなど。スッスーロも、アブラモビッチの所有だという噂を読んだ。本当かしら??

アブラモビッチのことを考えると、気が狂いそうになる。

彼が送っている、常人とはかけ離れた豪華絢爛な生活のことを思うと、今こうやって切ない人生を送っている自分の存在が、ホコリか何かのようにくだらないことと感じられて仕方ない。
彼が手にしている、すばらしい人生、例えば4台のヨットを合わせると400億円に達するとか、4台のヨットを維持するだけで、年間20億円ぐらいがかかるという話を聞くと、驚いてしまい、思考が停止する。50億円って、一体どういうお金なんだろう。

アブラモビッチには心底憧れる。
素晴らしい人生を送っているようで、本当にうらやましい。もちろん、そのための努力は惜しまなかったのだろう。オリガルヒとクレムリンの邪悪な関係や、ロシアの失われた経済発展の可能性などの話を全部無視するなら、彼が行ったことはただただ賞賛に値するように思えてしまう。

あんな人生を送ってみたいかも。送ってみたくないかも。どっちか分からない。
自分がそんな人生を送ることはないという事実だけが確実な中で、決めかねて分裂していく感情に思考がついて行けない。

これ以上オリガルヒのことを追って何になるのだろう? 身の回りの全てが、切なく思えて仕方ないなら、もっと別の楽しいことに専念するべきじゃないか? そんな時期に達していると感じる。

Tuesday, July 05, 2005

"プーチニズム"発売

私が昨年末に読んだアンナ・ポリトコフスカヤの"Putin's Russia"が日本語訳され、本になった。
NHK出版から、先月25日に、"プーチニズム 報道されないロシアの現実"というタイトルで発売された。
ISBNは4140810548。

NHK出版は、ポリトコフスカヤの前作"A Small Corner of Hell"も、"チェチェン やめられない戦争"というタイトルで昨年8月25日に発売している。

チェチェンに関しては翻訳本がずいぶん充実してきているような印象がある。
オリガルヒに関しても、いろいろ出てくれればいいんだけど。
とりあえず、メモ程度の気持ちで投稿。

------

プーチニズム(Putinism)というのは耳慣れない言葉で、私自身はこの本のタイトルで初めて聞いたのだけど、インターネットを検索してみたら、ちょこっとずつ使われるようになってきている単語みたい。
私はこれまで、チェチェンに対するロシア政府の姿勢や、ホドルコフスキーに対する動向は、プーチン政権が日和見主義的に、その場その場で対応してきた結果であって、そこに何らかの主義が存在するとは見なしてなかったのだけど、それを一つの思想として、つまり「プーチン主義」として捉えるやりかたは、面白いかもしれないと思った。
つまり、日和見主義と私利私欲がないまぜになったようなものが、プーチン政権の根源にあるわけだけど、それはプーチニズムと名付けて考察してみる価値がある、と。一理ありかな。でも、それは、卵が先か、鶏が先かを真面目に考えるような、堂々巡りでしかないという気もする。『プーチン政権は、日和見主義的だ。』、『日和見主義的であることが、プーチン政権の一番の特徴だ』の両方を考察するとすれば、それは言葉遊び以外の何物でもなくなっちゃうだろう。
一方で、プーチニズムという便利な名前に頼ってしまって、それだけで何かを説明できたような気分になってしまうのが潜在的な問題性だと思う。「プーチニズムによって、これこれこういう事態になりました」という説明をすれば、それは分かりやすいし、聞いている人の気分としては分かったような気になるんだけど、その実、主張も説明も何もなくて、考察の深さは退行するという悲劇的な状況が目に浮かぶ。
カナカナを用いるときは、自分が何をどの程度まで説明したいのか、あるいは、できるのか、意識することが必要なんだと感じる。

それはともあれ、プーチニズムという言葉は、ポリトコフスカヤの原著の中では確か一度も登場していない言葉だけど、本のタイトルにするには、パッと見の分かりやすさと衝撃性があって良いと思う。

Tuesday, June 21, 2005

クレブニコフ読み終わり

なんだかすっかりこのブログのことがどうでも良くなっている。その理由は、一言で言うと、飽きちゃったからなんだと思う。「別に書いても仕方ないでしょー」みたいな気分を感じてる。めんどくさいし。

とりあえず、ポール・クレブニコフの"God father of the Kremlin"は読み終わった。なかなかに面白い本だった。この本の書評はそのうち書くつもり。もちろん、読んだ部分に書かれていた情報のまとめも。ただし、まとめる部分は120ページに達しているという事実を想うと、まとめを書く気力がなくなってくるのも確か。

ま、そのうち。


今は、クリスチャ・フリーランドの"Sale of the Century"を読み始めたところ。
この本もすんごくむずかしい。クレブニコフの一冊だけを難しく感じたなら、まだいいのだけど、2冊連続で難しいと感じたとすれば、それは本が難しいのではなく、自分の読解力が低いってことじゃないかしら。
結局1月から6月までの半年でようやく300ページちょっとの本を1冊読んだだけ。英文を読む時間がおもいっきり減っているから、読む能力が落ちたんだと想う。これはゆゆしき問題だ。
もっと本腰を入れて、一日何時間か決めて、読んでいくということをしなくちゃいけないんだと思う。

そういう方向に、どうか頑張れますように。


余談としては、先月の27日にアブラモビッチとプーチンが会談を行った。アブラモビッチは現在、チュクチ区の知事で、その任期は今年の秋に切れることになっており、アブラモビッチ本人は再任したくない意向とのこと。それに対して、プーチンはやめさせたくないらしい。急速にイギリスでの滞在時間が増えつつあるアブラモビッチだけども、プーチンからすれば、彼はロシアにもっともっともっとお金を投入するべき義務があるらしい。もちろん、彼の資産はロシアの国有資産をかっぱらったものだから、その論理はそれほど倒錯しているわけではないと私も思うのだけど。
とにかく、「辞めんなよ」みたいな話をしたらしい。

あとは、今月の中旬に、サンクトペテルブルクで、経済フォーラムがあったのだけど、その席において、プーチンとアゼルバイジャン大統領のイルハム・アリエフと、ルクオイルのアレクペロフが楽しく笑ってお話している写真がGettyImagesにあった。
アレクペロフの話ももっともっと調べなきゃ。

もちろん、ロシア語も勉強しなくちゃ。アルファベットだけは読めるようになったんだけど、文法はゼロ。語彙もゼロに近い。発音も危なっかしいし。そもそも巻き舌ができなくて、そこでつっかかってるし…。ふむふむ。

とにかく、クリスチャ・フリーランドを読み終わったら、デイビッド・サッターを読んで、アミラ・ハスまで行けたら、一度、最近読んだ本を読み直してみる予定。デイビッド・ホフマンの"The Oligarchs"ももう一度読まなきゃいけない気がしてきたし、クレブニコフも全部の情報は読みきれてないのが明らか。ポリトコフスカヤの"Dirty War"を読みたい気持ちもあるにはあるんだけど。

Wednesday, June 01, 2005

ホドルコフスキーの件。

ユコスの裁判の件は、ようやく火曜日に判決が出た。ホドルコフスキーは9年間、服役するという結果になった。
求刑されていた10年間より、1年分だけ短い。

ホドルコフスキー陣営は、控訴する方針だとのこと。
一方で、今回の裁判では対象にならなかった他の件に関して、当局は別途裁判を起こすつもりらしい。

Thursday, May 19, 2005

ユコスの件

ホドルコフスキーの裁判が大詰めにきていることを書いたのだけど、裁判はまたも途中で延期になった。

この裁判の現在の段階というのは、‘判決を読んでいる最中’らしい。この裁判において、判決というのは、10秒ぐらいで簡単に言い渡せるものではないらしく、1ページ読むのに10分ぐらいかかる文章が15センチほどの厚さになったフォルダを声に出して音読することらしい(もうよくイメージできないけど!)。
だんだんはっきりしてきたのは、この裁判の判決というのは、あと何週間も何週間もかかるかもしれないということ。フォーブスが、"Khodorkovsky Verdict Could Take Weeks To Read"という記事を出している。

ホドルコフスキーの弁護を勤めているアムステルダム弁護士は「裁判の結果に世界中のメディアが注目しているうちに罪状が言い渡されることはないだろう。人々の関心が薄れたら、すぐに終わるだろうが」と言っている。この情報は、モスニューズより。

この発言を読んで、「確かにそうかもしれない」と私は思った。今は多くの人がホドルコフスキーの未来を気にしていると思うんだけど、こういう状況が10日間とか1ヶ月とか続いたら、たいていの人は興味を失っちゃう可能性が高い。

ホドルコフスキーの裁判に関しては、『プーチンは独裁に向かっている』といった文脈のなかでいろいろ批判が強いわけで、アメリカ政府のライスなどを含めて、この裁判を批判した人は多い。ロシア政府としては、ここですんなり罪状を言い渡して、メディアのヘッドラインを更に賑わせるよりも、どんどん後伸ばしにして、皆がうんざりし始めて、多くの人がこの問題を忘れたころに、こっそりホドルコフスキーを牢屋にぶち込みたいんだと思う。それが、プーチン大統領の狙いと言えると思う。
そんな狙いに対抗するためには、私は裁判のことを追い続けるしかないんだろうなーと思う。関心を失わないように。

それにしても、ロシアの司法制度というのは大統領の影響の直下にあるという感じ。三権分立という考えは機能してない模様。司法というのは完全に行政の元にある。これは行政の側にとってはとても都合の良いものだろう。この状態が変わる可能性を私は見出せないでいる。

-----

今日、病院に行って、50分の待ち時間の間にポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"を187ページまで読んだ。今回の分は、第6章の'Privatizing the Profits of Aeroflot'という章でエアロフロートの資金の流れをいかにしてベレゾフスキーが手中に収めたかが書かれていた。
ベレゾフスキーの言い分によれば、民営化というのには3つの段階があり、1つ目は利益の民営化であり、2つ目は株式の民営化であり、3つ目は負債の民営化となるらしい。
もはや意味不明な考えなんだけど、彼の頭の中では筋が通っているらしく、実際の民営化もこの考えのもとに行われたと言ってよい。

つまるところ、利益の民営化(=会社の利益を巻き上げる)には、その会社の株式を取得する必要はなく、会社の経営陣に自分の仲間を送り込んで、その彼らに、例えば自分のところの銀行と非常に不利な借金の契約を結んでもらえば良い。といったこと。手数料を取りまくって、利益を巻き上げるのがベレゾフスキー方式だったとのこと。

今回の話は、ベレゾフスキーの履歴で中ぐらいのところにあたる1996年とか1998年ぐらいのことが書いてあった。
彼の事業は、最初がオートバスで、その後ORTが出てきて、エアロフロートが来た後、シブネフチの民営化があって、最後にプーチンと反目して彼の資産は大爆発する。

Tuesday, May 17, 2005

ユコスとガスプロムネフチ

最近のニュースをいくつか。

ユコスに関して。ホドルコフスキーとレベデフの裁判の件は、月曜日から評決が言い渡されている。
火曜日までのところで、二人が罪に問われていた7つの件に関しては全て有罪という結果になった。
どれぐらいの罪状になるのかは不明。水曜日(今日)にも裁判は続くので、日本時間で明日の朝にはもっと詳しいことが分かるかな。

ガスプロムとロスネフチが合併してガスプロムネフチになる件だけど、これは暗礁に乗り上げている。
もはや合併はありえないという見方も強い。ガスプロムとロスネフチの合併はプーチンの側近からも前から反対の声があった。ついでに、ロスネフチのほうはユコス関連のユガンスクネフチガスの買収に関連してゴタゴタしてきてしまっているので、ロスネフチと合併することでガスプロムにもこのゴタゴタが飛び火するのは避けたいという面も大きい。ガスプロムは世界最大の天然ガス生産会社だから、政府にとってもこの点は無視できないらしい。

詳しくは、モスニューズで。
モスニュースって、軽めのニュースばかりなんだけど、分かりやすい物が多く、使えるサイトかもーと思い始めているところ。チェチェンとか、オリガルヒ問題でどんな立場をとるのかちょっと見極めきれないところもあるんだけど、しばらくのところはちょくちょく訪れてみようかなーと思っている。

もうひとつ、サイトの紹介を。
最近発見した中では、highrise russiaというサイトがなかなかに面白い。工事中の部分が多いのだけど、Galleryは出来上がっているところが多く、ロシアの趣きあふれる写真をたくさん見ることができるすばらしいサイト。オリガルヒ関連としてはユコスの本社ビルが写っているところがポイントが高い。
ユコスの本社ビルは、Zamoskvorechiyeという場所の近くにあるらしい。あのビルは、確か20階建てで、夜はとてもきれいなんだよね。モスクワに行く機会があったら、ぜひ実物を見てみたい。ルクオイルの本社ビルと、ガスプロムの本社ビルと共に。ガスプロムの本社ビルは高さ151mで、モスクワで9番目に高いビルらしい(トライアンフ・パレス(これのロシア語名って何だろう?)に抜かれるまでは。トライアンフ・パレスはもう完成したかしら? 今年の1月に完成という情報と3月にはまだできていない情報と両方ある。建物の外壁は天辺まで完成しているけど、内装がまだなんじゃないかと思う)。

Monday, May 16, 2005

最近のごたごた-"Abramovich"とフリードマンとBP

どうしようもない日々を送っている。

私が昨年の暮れに読んでいたドミニク・ミッジリーとクリス・ハッチンズの"Abramovich: The Billionaire from Nowhere"だけど、今月の3日に予定通りペーパーバックが出版された。

その情報をAmazon.co.ukで見たところ、なんとペーパーバックの表紙の写真はハードカバーと同じものが使われていることが判明。
もともとAmazon.co.ukに表示されていたペーパーバックの写真は、アブラモビッチが嫌みったらしくニヤついているようなところで(これは言い過ぎか?)、「そんなものを買うなら遥かに値段が高くてもハードカバーを買う価値があるかもー」なんて思って、高い買い物を納得させたというのに、ペーパーバックのほうにも同じ写真が使われているならペーパーバックの出版を待てばよかった。そもそもあんまり面白くない本だったし、慌てて読む必要はなかった(でも、簡単に読めたので、気分が良かったことは間違いない)。

それよりも気になってしまったのは、ペーパーバックの表紙に、'With New Explosive Chapter'という文字が入っていること!
なんとぉー!!! 増補されちゃったのか…。原版のハードカバーが昨年の10月で、それから7ヶ月しか経っていないから、特に追加する内容もないだろうと思って、安心してハードカバーを買ったのに、こちらも思いっきり見当違い。これまでの学術書と違って、暇つぶし用の本だけあって、扱いが違うのね。ふむふむ。
あーん、それにしても、ペーパーバックの値段は、ハードカバーの3分の1強だなんて…。

-----

ポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremilin"は、時間を取って読み進めていて、169ページまで読み終わった。これは、第5章のリスチェフ・マーダーをちょうど読み終わったところなんだけど、こちらの本についてもできれば書いておきたいことがいっぱいあった。今は頭が混乱してるので、うまくまとめられないけれど、ちょこっとだけ触れておくと、リスチェフ殺しの犯人について。
これは、1995年の3月1日に殺されたロシアの元国有放送チャンネル1(後のORT。ベレゾフスキーが支配していたロシア最大のTVネットワーク)の実力者ブラド・リスチェフのお話。
デイビッド・ホフマンの"The Oligarchs"には、『リスチェフとベレゾフスキーは非常に仲がよく、二人は同じ側にいた。リスチェフを殺したのは、モスクワの荒くれもの』といった説明がなされていたのに対し、クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"では、『リスチェフを殺したのはべレゾフスキーだ』と書いてあった。

これに関しては、ホフマンとクレブニコフで見解が180度違う。他の点に関しては似ているところが多いのだけど、殺人が絡んだ大きい事柄に関して、両者の間にこれほどの見解の相違があるとは思わなかった。
どちらのほうが正確かどうかは今のところ私には分からないのだけど(混乱してる)、取り合えずということで、この件は見逃せない。

ついでに、"Godfather"を読んでてふと気になったのは、ミハイル・フリードマンに関して。
「フリードマンがどうした」というわけではなくて、"Godfather"ではフリードマンの扱いがものすごく小さい。小さいどころの騒ぎじゃなくて、巻末の索引に項目出しされていないぐらい、完全に無視されていた。
アルファ・グループに関しては、アーベンのことは結構頻繁に出てくるのに、フリードマンのフの字も出てこない(全部のページを意識して確認しなおしたわけじゃないので断言はできないけど、169ページまでにフリードマンの名前は一度も出てきてないと思う)のは変だね。
ところで、アーベンはもともと、かの有名な“若き改革者たち”の一人だったらしい(チュバイスとかガイダルとかね)。政府内にいるときに規制を崩しておいて、その後、アルファ・グループに移って、自分が崩しておいた規制を使ってボロ儲けしたところが、クレブニコフはむかついていたらしい。『破廉恥にも!! どうたら~~』みたいな調子の文章が続いていた。

フリードマンの話に戻すと、クリスチャ・フリーランドの"Sale of the Century"の巻末のところで知った面白い記事がある。
2003年の10月5日にサンデー・タイムズ紙に掲載された"BP: from hate to love in Russia"というのがそれ。タイムズのウェブサイトで全文を読むことができる。
この記事はなかなかに面白くて、BPがフリードマンといかに最初は敵対しつつ、今ではよきパートナーになったかが良く分かった。
フリードマンに関してもいろいろ追ったら面白そうだな-と思う。特に、スラブネフチの売却劇などは、参考になる点が多い感じがするし。BPとチュメニが共同出資したTNK-BPの存在も興味深い。TNK-BPは最近、BPの石油生産の4分の1を担うほどになっていると記憶している。

そんなところで今回はここまで。