オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Wednesday, November 17, 2004

ルーブル危機!

昨日は第15章、Roar of the Dragonsを丸々、397ページから441ページまで通して読んだ。
この章は、45ページとなかなかに長いのだけど、「昨日50ページ以上読めたのだから、この章は一日で行ける!」なんて思ったのが運の尽き。負担としては昨日よりも大きかった。
というのも、この章は1998年のロシアの通貨危機の話だったの。Dragonsというのは、2匹のドラゴンのことなんだけど、1匹は国債返済に関して、もう一つはルーブルの対ドル固定相場の問題。
そう、この章は、経済に関する内容なのだ…。

経済となるととたんに頭が痛くなる私。本当に何言っているか分かんない。日本語で説明されたって分からないだろうことを英語で説明されてる。そもそもルーブル通貨危機って何よ?

困った。どうしよう。困った。

でも、ここで躓くわけには行かないということで、できるだけ理解しようと務めながら、45ページを読み進めた。
注目は、405ページでアブラモビッチの名前がようやく初めて出てきたこと。けれど、彼の名前は一度出たきりで、その後、再び見ることはなかった(少なくとも441ページまでのところは)。

またまた面白いと思ったのは、1998年にはユコスとシブネフチの合併が発表され、数ヵ月後に破談になったのだけど、破談の理由についてデイビッド・ホフマンは触れていない。けれど、ポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"には、アブラモビッチが反対したから破談になったと書いてあったのよね。
この"Godfather of the Kremlin"は、このブログの中で何度も名前が出てくるけど、私はまだこの本を読んでない。というか、手に入れてない。なのに、なぜ本の内容が出てくるかというと、Amazon.comの本の内部の検索を使って、アブラモビッチに関するところは全部読んどいたから。その結果分かったのは、"Godfather of the Kremlin"にはアブラモビッチに関することはあまり出てこないということで、読む気がくじけてしまったのである…。
でもデイビッド・ホフマンも最後の参考文献のところで、"Godfather of the Kremlin"の名前を挙げてるし、結構大事な本の一つではある。

このRoar of the Dragonsを読んで分かったのは、このときチュバイスの対応は後手後手になってしまっていたこと。
結果的にルーブルの切り下げを行うんだけど、もっと早くやればよかったんだろうし、国債の発行の仕方も乱雑。
この国債に関する話を読んでいたら背筋が凍りそうな思いがした。1998年の初夏から、ロシア政府はもう国債が返せなくなって、国債を返済するために新たな国債を発行していたとのこと。特にロシアの場合は、利子が100%とかって巨額だったりしたので、国債が雪達磨式に膨らんでしまったのだ。
(この理解でいいんだよね? 本を読み間違えてはいないよね? この章、もう一度読み直したほうがいいかも。ルーブル通貨危機に関して日本語の文献で知識を養ってから、もう一度。)

これって、日本の状況じゃん。日本の国債って、今年6月末の時点で729兆円。一方で、日本政府の一年間の税収は41兆円。日本政府が支出を0に抑えても、このままだと、17年かかっても返せない。
そして、「経済が上向きになれば」なんて素敵なことを思っていても、日本の経済って既に発展しきっちゃったのだから、例え順風満帆に成長しても、その規模が2倍や3倍になるわけはなく、税収だって、そんなに劇的に増えるはずがない。
結局どうなるんだろう。

ロシアに置いてチュバイスは最終的にルーブル切り下げを行った。この少し前辺りから、ルーブルへの信頼はなくなっていて、ドル建ての借金というのが増えていた。そんな中、ドルに対してルーブルの切り下げを行うってことはドル建ての借金の重みを増やすってことなんだよね。1ドル=7ルーブルだったところが、1ドル=20ルーブルってところにまでなった。

今1ドル=106円ぐらいなのが、302円とかになっちゃったらどうしよう。どうしようとか言ってもどうしようもないし、庶民の私、日本から脱出なんて出来ないのだけど。ロシアから脱出できなかった庶民の人々、本当に酷い。Roar of the Dragonsの最後のほうで、せっかく貯めたお金が消えてしまった人の話があり、本当にかわいそうに思った。

ホドルコフスキーとか、スモレンスキーとか、銀行を経営してて、そこにお金を預けた人にはお金返さなかったくせに、自分たちは逃げちゃって最低だわ。

この章で顕著なのは、チュバイスの決定力のなさ。物事が上手く行っているときは、頑固なことも魅力的だけど、こんなふうになっちゃうとチュバイスなんてただの木偶の坊じゃんなんて思ってしまった。昨日、「私のアナトリーちゃん」なんて書いたのが夢のよう。あっさり見切った。

そうだよ。そうだよ。この頑固さで、ロシア経済を右に左にと振り回し、滅茶苦茶にしたんだ、彼は。誤解しちゃあいけないわ。

そんなわけで、スモレンスキーはさようなら~という話。
彼はなによりも銀行家だったわけで、銀行はルーブル危機で最大のダメージを負った。ホドルコフスキーもメナテップという非常に大きな銀行を持っていたけど、同時に彼はユコスを持っていたので、銀行がぶっ潰れても、ユコスで稼げた。実際、現在だってロシア一番の金持ちはホドルコフスキーだもんね。
同様にベレゾフスキーはシブネフチが、ポターニンはニッケルが、フリードマンも石油があったわけ。
結局オリガルヒたちは、逃げ切れちゃったという見方のほうが正確だろうね。

けれど、このルーブル通貨危機以後、オリガルヒたちはもう二度と元のようには戻れなかったとデイビッド・ホフマンは書いている。スパロウ・ヒルの会談や、ダボスの7人組のようには。
だけど、思い起こせばそれだけロシアが体外的に開かれたという意味でもあるよね。スパロウ・ヒルや、ダボスは、いかにロシアが閉じられた世界で、狭い世界の中でオリガルヒが暗闘していたかということだった。一方でルーブル通貨危機というのは、外国からの影響を受けて起きたもの。背景にはアジアの通貨危機もあるわけだ。
ロシアが段々開かれた国になった。だから、オリガルヒたちが少数で集まって、勝手に何かを決めてしまうなんてことはできなくなったように思う。それが1998年あたりに起きたこと。

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ところで、今のロシアで金持ちランキングはどんなものかなーと見ていたらフォーブスのサイトにすごいページが!
100 Richest Russiansというページなんだけど、今年の7月の記事で、ロシアの金持ち100人の名前が出てる。
編集したのは、そう、あのポール・クレブニコフ。今年の7月に何者かによってモスクワで銃撃され死亡した。

そしてその理由は、まさにこの記事だ。この記事は、もともとフォーブス・ロシアが出したものだけど、ロシアにおいて、このように誰がお金を持っているかを明らかにするのは基本的にはタブーなこと。治安が確保されてないロシアでは、お金を持っていることがバレると、たかりにあってしまうから。

クレブニコフは、この記事でそのタブーを破ってしまったわけで、それに対してぶちきれた人が、彼の命を奪った。だから、ここのリストに出てる人の中にその犯人がいるのだ。

東京にいて犯人探しは出来ないけど、ホドルコフスキー、アブラモビッチ、その他の既に有名なオリガルヒは関係ないだろうね。彼らの名前はもともと世界中に知られ渡っていたわけで、こういう記事が出たところで状況に変化はない。困るのは、このリストで始めて名前が出た人。でも、そんなこと言われても分からないけど。

リストを見てみると、ホドルコフスキー1番はいいとして、ポターニン5番、フリードマン6番、アレクペロフ10番、ボグダノフ13番、アーベン16番など、古くからのオリガルヒがかなり残っているね。
ルーブル通貨危機を乗り越えてしまうのね。普通の人の犠牲の上に…。


ついでに、フォーブスのほかの記事を見ていて注目したのはアレクペロフ。
彼は、ルクオイルのオーナーで、私はあんまり気にしてなかったのだけど、もしかしたら、非常に面白い人かもしれない。
フォーブスの金持ちランキング(全世界の方)だと、1997年で176位。2001年が387位。2002年が327位。2003年が329位。2004年が186位。
ずっと上位にいる。通貨危機の前にフォーブスに出て、その後も上位に戻ってきたのは、彼と、ホドルコフスキーとポターニンぐらい。アレクペロフは、ソビエト末期にも政権内にいて、今プーチンとも非常に良好な関係にある。
大人しくしてるから目立たないけど、彼の処世術っていうのは半端なものじゃないと思う。Loans for Shareのところで、こっそりルクオイルをかっぱらったことを含めて。
アブラモビッチだけじゃなく、アレクペロフのことも、今後調べていきたい。

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