オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Tuesday, July 05, 2005

"プーチニズム"発売

私が昨年末に読んだアンナ・ポリトコフスカヤの"Putin's Russia"が日本語訳され、本になった。
NHK出版から、先月25日に、"プーチニズム 報道されないロシアの現実"というタイトルで発売された。
ISBNは4140810548。

NHK出版は、ポリトコフスカヤの前作"A Small Corner of Hell"も、"チェチェン やめられない戦争"というタイトルで昨年8月25日に発売している。

チェチェンに関しては翻訳本がずいぶん充実してきているような印象がある。
オリガルヒに関しても、いろいろ出てくれればいいんだけど。
とりあえず、メモ程度の気持ちで投稿。

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プーチニズム(Putinism)というのは耳慣れない言葉で、私自身はこの本のタイトルで初めて聞いたのだけど、インターネットを検索してみたら、ちょこっとずつ使われるようになってきている単語みたい。
私はこれまで、チェチェンに対するロシア政府の姿勢や、ホドルコフスキーに対する動向は、プーチン政権が日和見主義的に、その場その場で対応してきた結果であって、そこに何らかの主義が存在するとは見なしてなかったのだけど、それを一つの思想として、つまり「プーチン主義」として捉えるやりかたは、面白いかもしれないと思った。
つまり、日和見主義と私利私欲がないまぜになったようなものが、プーチン政権の根源にあるわけだけど、それはプーチニズムと名付けて考察してみる価値がある、と。一理ありかな。でも、それは、卵が先か、鶏が先かを真面目に考えるような、堂々巡りでしかないという気もする。『プーチン政権は、日和見主義的だ。』、『日和見主義的であることが、プーチン政権の一番の特徴だ』の両方を考察するとすれば、それは言葉遊び以外の何物でもなくなっちゃうだろう。
一方で、プーチニズムという便利な名前に頼ってしまって、それだけで何かを説明できたような気分になってしまうのが潜在的な問題性だと思う。「プーチニズムによって、これこれこういう事態になりました」という説明をすれば、それは分かりやすいし、聞いている人の気分としては分かったような気になるんだけど、その実、主張も説明も何もなくて、考察の深さは退行するという悲劇的な状況が目に浮かぶ。
カナカナを用いるときは、自分が何をどの程度まで説明したいのか、あるいは、できるのか、意識することが必要なんだと感じる。

それはともあれ、プーチニズムという言葉は、ポリトコフスカヤの原著の中では確か一度も登場していない言葉だけど、本のタイトルにするには、パッと見の分かりやすさと衝撃性があって良いと思う。

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