オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Thursday, November 25, 2004

なぜチェルシーFCを買ったか?

アブラモビッチには本当に感謝している。もし彼がチェルシーを買うことがなかったら、私はオリガルヒに興味を持つことも、チェチェンの情報を追うことも、パレスチナのことを知ることも、マスメディアの情報に不信感を抱くこともなかったと思う。

ありがと! ロマン!

…。なんてね。ダメだ。なんか、神経衰弱になりかけてるかも。けど、まさに2003年の夏から、いろいろな見方が変わったのは動かしようのない事実。それまでも、いろいろ疑問に思うことはあったけど、こういうふうな形で花開いていくとは考えてもみなかった。

そんなわけで、"Abramovich"の到着を心待ちにしてるんだけど、この本の中には、彼がなぜチェルシーを買ったか、著者の推測を書いてあるそうだ。だから、それを読む前に私が今思っていることを書いておきたい。一つの記録として。つまりチェルシーを買った理由に関して。

彼がチェルシーを買った理由は、有名になりたかったからだと思う。これは、虚栄心とかそういう意味ではなく、有名になることで保護を得たかった。ロシアにおいては、ホドルコフスキーの件を見ても、オリガルヒがいきなり投獄されるとかっていうのは、普通にありうることだもんね。
けれど、今のように有名になったら、そう簡単には手を出せない。2003年の夏の時点では、こういうふうには思いつかなかったけど、その後、ホドルコフスキーの件を見て、グシンスキーとベレゾフスキーの事も知った今なら分かる。
彼がやろうとしていたことはものすごく読みが良かったと思うし、狙い通りになった。状況をきちんと分かっていたんだね。さすがだ。その後、彼はシブネフチの株は売り払ったし、アルミの会社の株もデリパスカに売ったと聞く。着実に資産を持ち逃げしてるよ。

でも、有名になりたかったのはいいとして、なぜサッカーか? なぜチェルシーか?という疑問は残る。最初の疑問に対しては、近年、サッカーがヨーロッパでものすごく人気のあるスポーツだからということで、片付けられると思う。人気のあるところに絡んでいけば、有名になるのも楽だよね。実際、サッカー・バブルは弾けた後で、金欠な状態にあったから、彼のお金というのはものすごく注目を引いた。今となっては、ヨーロッパのサッカー界でアブラモビッチの名前はあますとこなく知れ渡ったわけだ。有名になるということを目的としたとき、これ以上の手はないんじゃないかな。

では、なぜチェルシーか? これはチェルシーでなくても良かったと思う。ただ、売りに出されたのがチェルシーだけだっただけのことで。
彼にとって必要だったのは、相手がロンドンに位置していることだと思う。ロンドンっていうのは、不思議な都市だね。ロシアの影響力が全くない。いや、逆にロシアと対決してるような感じもするよ。
例えば、チェチェンのザカーエフを保護してるよね。ロシア政府は引き渡せといっているけど、イギリスの裁判所はそれを認めなかった。また、2003年の9月には内務大臣がベレゾフスキーに庇護を与えている。

つまり、ロンドンっていうのは、クレムリンと対峙する人間が逃げ込む場所としては、とてもいい場所なんだ。グシンスキーも、ロンドンにしばらく逃げていた時期がある。

そういえば、今日のフィナンシャル・タイムズによると、先週ユコスのトップがロンドンで会議を開いたとか。前に名前を出したスティーブン・シードもロンドンに逃げてきてるし。

そう、ロンドンじゃなきゃダメだったんだ。

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ところで文頭に戻ると、なぜオリガルヒから私の興味が広がっていったかというと、まずオリガルヒがプーチンと対立していることは2003年の夏の段階で明らかで、プーチンがどんな政治を行おうとしているかを考えるには、チェチェンのことにも注目せざるを得なかったから。プーチン政権とチェチェン紛争は切っても切れない。それで、チェチェンのことを追っていくとなると、パレスチナ問題にも突き当たってしまう。この二つの問題の根底には共通した傾向が見られるし、両方に興味を持っている人は多いね。そんなこんなで話を追っていると、マスメディアに流れない情報の流れが存在することに気づきだした。

けれど、マスメディアに関する私の不信感は、やっぱりアブラモビッチの件で確定されたような気がするなー。アブラモビッチがチェルシーを買った当初、新聞やテレビにおいて、彼のことは「石油で儲けた人」として紹介された。ただそれだけ。その記述が見当違いだとは言わないけど、説明になってないよ。ソビエト社会主義共和国連邦においては、企業などは全て国営だった。石油資源も国のものだった。まったく、共産主義よ。だから5ヵ年計画とかがあったんじゃない。
そんな状態から、なぜ資産が1兆円を越すような大富豪が出てくるのか…? それを「石油で儲けた」という一言で説明するなんて無茶だと思う。どこかの王族の話をしてるわけじゃないの。資源を世襲したわけじゃない。
そうじゃなくて、ロシアの資本主義化の中でこういう人たちが誕生したんだ。それなのに、石油という枠組みで一括りにされ、それで何かが解明されたような気になる。そういうのはおかしいと思ったんだ。

まぁ、少し譲歩すると、私がこの問題にとりわけ興味を持ったのは、チェルシーのファンだったからであって、そうじゃなかったら無関心なのも仕方ないかな。チェルシーを気に入っているものとしては、一体どのようにして稼がれたお金なのか、知らないでは済まされないと思った。けれど、そうじゃなかったら、“彼は石油で稼いだ人”という認識でも構わないよね。全ての情報を追いかけるわけにはいかないもの。時間も足りないし、エネルギーも。私も追いかけられない情報が山ほどあるから、このことで責めるわけにはいかないね。

あと、これは前にも書いたことだけど、イギリスのメディアは、彼がオリガルヒだってことや、悪いことをたくさんしてきたことを分かっているはずなのに、ずいぶんと甘かったよねー。全然悪いやつだって書かなかった。
あの当時、フィナンシャル・タイムズがなんて書いていたか注目しとけばよかった。フィナンシャル・タイムズってどうも読みにくいからチェックしてなかったんだけど、クリスチャ・フリーランドがいるんだもん。良いことを書いてくれてたんじゃないかなー。一方で私が読んでたガーディアンとか、インデペンデントは甘かった。これは覚えてる。

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