オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Monday, November 22, 2004

書評:"The Oligarchs"

これは、先に延ばしてしまうとやらなくなってしまいそうなので、今のうちに。"The Oligarchs"の書評を。
全体としては、とんでもない情報量で、非常にためになる本。文句なしでおすすめだよ。

細かい内容については、今までたくさん書いてきたのでいいとして、総括すると、ロシアのオリガルヒに関する最高の入門書だと思う。
(最高のとかいっても、オリガルヒに関する本はこれしか読んだことなくて、他のと比べたわけではないんだけど)

なぜ入門書かというと、デイビッド・ホフマンがこの本で目指した目的は、既に公に知られている事実を可能な限り網羅することだったと思うから。

ここには何か革新的なもの、意外な見解はほとんどない。彼とベレゾフスキーの関係からすれば、もっともっと書けたとは思う。もっとずっといろんな秘密を知っていたはず。だけど、そういうことはせずに、あっさりとした内容に終始している。
その点では、オリガルヒ研究をたくさんしてきた人には向かないかな。オリガルヒって本当に謎だらけで、疑惑だらけでしょ。殺人も指示してるだろうし、恐喝も、詐欺も。そういった疑惑に真っ向から立ち向かう本ではないの。

けれども、初心者にとっては、これでいいんだと思う。いきなり秘密を暴かれても、基礎知識が何にもないところではどう処理していいか分からない。疑惑を疑惑だと理解するためには、背景知識を持っていることが前提なんだ。
その背景知識を得るということに関して、"The Oligarchs"ほど参考になる本はないと思う。500ページの本編の中で重要な出来事はほとんど網羅されてると感じた。
逆に、疑惑に関しては意図的に排除されているようだ。そのおかげで、この本の情報の信頼度は高くなっている。それっていいことだよね。この本に書かれたことに、本当かどうか疑わしい出来事はないんだ。

問題はといえば、彼がこれを書いたのは2001年なんだけど、それと今とでは事情がかなり違っていること。この本はもう古くなっちゃってる。
この本は、スモレンスキー、ルシコフ、チュバイス、ベレゾフスキー、ホドルコフスキー、グシンスキーの6人に注目していて、特に前半の30ページから174ページまでの145ページを費やしてそれぞれの生い立ちを追っている。これらの人のファンにはたまらない情報だわ。
一方で、それ以外の人物の取り扱いがすごく少ないの。ベレゾフスキーと関係の深かった、フリードマンやアーベン、ポターニンなどは結構出てくるんだけど、ベレゾフスキーから遠い場所にいた人の記述が圧倒的に足りない。アレクペロフが全部で3ページにしか出てないってのは前にも書いたよね。ボグダノフは2ページだし。
またロマン・アブラモビッチの名前が出たのはたったの2回。405ページと、489ページのみ。インデックスもされてなかった。アブラモビッチって、ベレゾフスキーのパートナーじゃなかったんだっけ?
この本を読んだ理由の一つが、アブラモビッチ情報を読みたかったことだったから、その点で残念だった。"The Oligarchs"は、Amazonで本内検索ができないから、こんなに取り上げられてないとは知らなかったのよ。

それでも、この本を読んだことで、私に圧倒的にかけていたオリガルヒ全般に関する知識というのを得ることができて本当に良かったと思う。素晴らしい本だ。よくぞ、ここまで網羅してくれた! 恐れ入った。デイビッド・ホフマン、すっげー☆☆☆☆☆

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デイビッド・ホフマンってのは、もともとレーガン政権に関していろいろ書いて名前をあげた人なんだよね。その後、エルサレムで特派員をした後、モスクワの支局長になった。今はとっても偉い立場になったみたい。
これは書こうかどうか迷うのだけど、知ってしまったんだからどうしようもない。既婚。子供二人。奥さんのキャロル・フレミングさんは、デイビッド・ホフマンと同じ大学出身。な~んてことを書いても、別にホフマンのストーカーはしてないんよ。これらの情報は彼らの出身校、ユニバーシティ・オブ・デラウェアのページに出てただけ。情報源としては至極まっとうだね。

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