オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Monday, November 22, 2004

ついに読破、"The Oligarchs"

"The Oligarchs"。読み終わった。ようやく。良かった良かった。読み始めたのは確か10月18日だったから、結局1ヶ月以上かかってしまったね。

この本は、2001年にハードカバーで出たんだんだけど、私が読んでる文庫版は2003年のもの。一番最後には、文庫版用に後書きが書き足されていて、その日付は2003年の10月27日になっていた。これって、10月25日にホドルコフスキーが逮捕された直後だね。

後書きでは、ホドルコフスキーの件にも少しだけ触れられていた。

その前に、Hardball and Silver Bulletsについて書かなくちゃ。
前回読んだところには、グシンスキーに闇が迫ってることが書いてあったけど、その後グシンスキーはロシアから脱出することになった。
同様に、ベレゾフスキーもプーチンと不仲になり、ロシアから亡命。

グシンスキーとベレゾフスキーが追い出されたのって、驚きでもなんでもないんだね。このことに気づかなかった私は、本当にどうしようもないぐらい頭が足りなかったとしかいいようがない。
グシンスキーはNTVを、ベレゾフスキーはORTを持っていたんだもん。そのことは、エリツィン再選に関する投稿で書いたけど、それをプーチンとの関連で捕らえることはなかった。

今になって気づくのは、プーチンがグシンスキーとベレゾフスキーをぶっ倒そうとするのは当然だ。
国営のRTRと合わせて、NTVとORTがあれば、メディアをコントロールできるんだから。
プーチンは、自分のことがテレビによって作り出された大統領であることをきちんと認識してるらしい。だからこそ、テレビを押さえにかかったんだ。

そして、文庫版の後書きを読んで思ったのは、ホドルコフスキーの事件、別の切り口で見たほうがいいかも…、ということ。
というよりも、私はなにか事実を思いっきり勘違いしたかもしれない。

ホドルコフスキーがプーチンの政敵になろうとしてたから、プーチンがホドルコフスキーをつぶしたと思ってたんだけど、事実は逆で、先にプーチンの側から、攻撃があって、それに対抗するためにホドルコフスキーは政敵として立候補し、プーチンからの攻撃を全面対決ということで、対抗しようとしてたような気がしてきた。

少なくともデイビッド・ホフマンはそういうふうに書いてる。
2003年の7月2日にメナテップ・グループのトップのレベデフが逮捕された。それがこの抗争が初めて表面化したものだよね。
ホドルコフスキーが大統領選に立候補する意向を示したのっていつだったかな。7月よりは後だったと思うんだけど、これは確認しなくちゃいけない。

とにかく、この逮捕の前に起きた事件としてデイビッド・ホフマンが注目してるのは、2月20日のクレムリンの会議で、その場でホドルコフスキーがセベルナヤネフチの売却について文句を唱えたという。
それに対してプーチンは、「(お前の)ユコスは過剰な油田を所有してる。どうやってそれらを得たんだ?」と脅すような口調で尋ね返したとのこと。

でもこれがきっかけ? デイビッド・ホフマンは、FSBの人間が裏にいると見ている。
FSBの中には、1990年代のオリガルヒ経済の中で損な立場にいた人がいっぱいいるんだ。これは、バディム・ボルコフが"Violent Entrepreneurs"の中で書いていたことだけど、FSBというのは、1990年代の初期に大掛かりな人員削減を行った。FSBを離れた人は、オリガルヒなどが所有する私的な警備会社に入り、そこで楽しい思いをした。
大金持ちになった人も多い。
一方で、FSBに残った人間というのは、そのように成功していく元同僚達を横目で見つつ、貧しい思いをした人たちが多い。

とすると、ここで、FSBがオリガルヒのNo1としてのホドルコフスキーを標的にしたというのも、理解できなくはないね。プーチンは元FSBで、プーチンの到来によって、FSBは表舞台に復帰中だ。
でもなんとなくうまくまだ説明できない。

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ところで、前々回の投稿で書いた、読売新聞の記事の最低入札額に関する記載はあまり意味がないんじゃないかなと思い始めてる。評価額1兆6000億円に対し、9000億円は、そんなに低くない。
もし本当に低く売るつもりなら、評価額の10分の一、1600億円ぐらいにするだろうからね。9000億円が低いという指摘はなりたたない。

一方で、スティーブン・シードが指摘していることは、考慮の対象に入れるべきだと思う。ユガンスクネフチガスがなくなったら、ユコスは終わりだよ。ユコスが会社として終焉だ。
もしユコスを存続させたかったら、つまり税金を払わせるだけだったら、別の方法がいくらでもあったはず。だけども、そういう選択ではなく、これはユコスを直接つぶすという決定なんだ。そのことが、最初の売却対象にユガンスクネフチガスが選ばれたことで明らかになった。

この決定を下したのは誰だろうかと考えると、分かりやすいのは、プーチンか、別の人かという二分法。
プーチンが自らこれを指揮していた可能性は高いね。プーチンはオリガルヒ以上に徹底的に相手をつぶそうとするから。ホドルコフスキーをぶっ倒すために、全力を傾けている可能性も。

一方で私が好きなのは、どうやら別の人が影で動いているんじゃないかという可能性。もしかしたら、ユコスのユガンスクネフチガスを前から欲しがっていて、そこにホドルコフスキーの事件が起きたから、便乗してユガンスクネフチガスを売ってもらえるようプーチンに頼んだ人がいるんじゃないかという気がしてる。
これは陰謀説だけど、楽しそうだよね。私、陰謀説は好きだ。

いずれにしても、ユガンスクネフチガスをどこが買い取るかはすでに決まっているんじゃないだろうか。
まず最初に除外されるのは外国勢力。BPとかエクソンとかも欲しいだろうけど、彼らが買うことは認められないと思う。この事件に、程度は別としてプーチンが関わっているのは間違いなくて、プーチンはロシアの内部の重要な資源を外国の会社に渡すことは絶対にしないだろう。

そんな危険性があったとしたら、ユガンスクネフチガスを売りに出すという真似はしないはず。つまり、これほど大きな石油会社が普通に売りに出されて、一番高い値段を出す人に「はい、どうぞ」と渡されることなんてありえないんだ。もうこれが誰の手に渡るか、事前に決められているに違いない。

逆にいえば、12月19日にこれを手に入れる人というのは、これまでの全ての過程において、かなり主導的な役割を担っていたはずだよ。彼こそが、ユガンスクネフチガスを売却するように進言し、それが認められた。
それはいったい誰なんだろう。ガスプロムだったら、影武者がプーチンだということで、プーチンの権力がものすごい強いことが示される。これは別に意外でもなんでもないけど。プーチンは、権威主義的な国家を作ってるし、ガスプロムのトップと仲いいのは秘密でもなんでもない。ガスプロムは国営だし。
もし、ガスプロムじゃなかったとしら、面白くなってくるね。今ロシアで誰がもっとも権力を握っているのかが分かると思う。そうなったらいいなーなんて思ってる。でも、そんなことはあり得るかしら。
やっぱりいろいろ情報を追ってみなくちゃね。

"The Oligarchs"はとてもよい本なので概要を改めて書きたい。それは次回以降、機会を見て。

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