オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Monday, December 13, 2004

マフィアの街、エカテリンブルグ

今日は"Putin's Russia"を202ページまで読んだ。前回、といっても5日間も前だけど、100ページの壁を超えたばかりで、次の日には200ページ目を超えるなんてかなりのハイペースだよね。

この本面白いし、読みやすい。使われている言葉もどちらかというと簡単だし。
1時間でだいたい25ページぐらい読める。"The Oligarchs"は1時間で22~23ページで、"Violent Entrepreneurs"は17~19ページだった。最近読んだ本の中で読みやすい部類に入るね。

本編は283ページまでだから、明日頑張れば読み終わるかも。残りが20ページぐらいなら家で読んでもいいし。なるべく早く"Abramovich"に入りたい。だって、"Abramovich"と"Godfather of the Kremlin"を来年の5月までに読み終わらないなんて事態はどうしても避けなきゃ。せっかくハードカバー買ったんだから。
(とはいっても、学校の往復でしか読まないという方向で話を進めている私、かなり怠惰だね。家でも読めばいいのかもしれないけど、つい別のことをしたくなっちゃうのよ…)

"Putin's Russia"の145ページから193ページまでは、How to Misappropriate Property with the Connivance of the Governmentという章で、ここでは主にエカテリンブルグのフェドゥレフという人間に関して綴られていた。
実は、エカテリンブルグというのは、フェドゥレフの街といってもいいぐらいなんだって!
エカテリンブルグっていうのは、モスクワ、サンクト・ペテルブルク、ノボシビルスク、ニジニノブゴロドにつぐロシア第5の都市(少なくとも人口は。約130万)なのに、たった一人の人間(というかマフィア)によって支配されているんかい…。ちょっと驚きだ。

このフェドゥレフという人間は、オリガルヒだよ。やってることが、まさにオリガルヒ。ホドルコフスキーやベレゾフスキーと変わんない。本当に無慈悲だ。アンナ・ポリトコフスカヤは本の中で、彼が犯してきたいろいろな犯罪を詳細に記録している。

それを読んで、「そうよ、これよ。この視点よ。この書き方よ。デイビッド・ホフマンも、このぐらいのこと書いて欲しかったなー」と思った。フェドゥレフというマイナーな存在に関して、ここまでのことが記述できるなら、ホドルコフスキーとか、グシンスキーについても、もっともっと書けたはず。惜しい。
(どうでもいいけど、"Abramovich"にはこんなこと書いてないんだろうね。アブラモビッチの周りで誰が銃殺され、どんな事件が未解決のまま調査もされずに放置されているか…。是非是非知りたいのだけど)
けれどその後で読むことになっている、クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"には、ベレゾフスキーが隠したい事柄がたくさん書かれているとのこと。ということは、"Putin's Russia"→"Abramovich"→"Godfather of the Kremlin"と読んでいくと、バランスが取れるのかな、と思う。「オリガルヒ批判→オリガルヒ絶賛→オリガルヒ批判」みたいな順序になるから。

それにしても、前回の投稿でリンクを張ったガーディアンの"He won, Russia lost"っていうのは、本当に秀逸な記事だね。短い文章の中で本当にたくさんの情報が載せられていた。あの文章を先に読んでいたから、今いろいろな本を読んで、膨大な情報が頭に入ってきても、うまく解釈していけるような気がする。無料で読める記事だし、最高だった。

にしても、エカテリンブルグ! すごいわ。裁判所が完全に腐敗している。裁判官が任命制なんだけど、おかげでトップの人間の言うことを聞く人しか重用されない。もし、仮に言うことを聞かない人が来た場合、鉄パイプでボコボコにされるとかって事態が起こったりして…。ありえない。エカテリンブルグはマフィアの街だよ。やばすぎる。

ウラル地方には、ウラルマシュという、それはそれは有名なマフィアがいて、彼らの名前は"Violent Entrepreneurs"の中にも出てきたんだけど、まぁ、とにかく強力なマフィア・グループなわけ。そんな彼らが活動の場としていた都市として、エカテリンブルグがあるんだね。
それで注目は、このウラルマシュというグループを向こうに張って、いかにフェドゥレフがエカテリンブルグという街を牛耳るようになったかという話。そう、フェドゥレフというのは、最強のマフィアをぶっ潰せるぐらいの奴なんだ。

後に残された死体は…、フェドゥレフの仕事仲間のアンドレー・ヤクシェフ(1995)。同じく仕事仲間でエカテリンブルグのオリガルヒだったアンドレー・ソスニン(1996)。元々彼の部下で後に裏切ったユーリー・アイシュル(1999)。
3人とも銃で撃たれて死んだそうで、ポリトコフスカヤは背後にフェドゥレフがいると見ている。
フェドゥレフってのは、気に入らなくなると仕事仲間を殺してしまうという評判があるみたいね。あー、怖い。あー、怖い。でも、実際のところ、アレクペロフもね、仕事仲間を殺すという評判があったりする。殺人は、オリガルヒの証。

ポリトコフスカヤが154ページにこう書いている。
『人を殺すと、尊敬されるようになる。それが最近のロシア』、とのこと。そんなのダメだよ…。

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てなわけで、"Putin's Russia"は、オリガルヒ研究という面から見ても、読む価値がある本だね。オリガルヒというのは、現在のロシアの様々な領域に影響力を持っているわけで、どんな切り口でロシアを見ても必ず出てくる存在なのかも。
一方で、実は巻末のポストスクリプトのところを読んだ後、「ポリトコフスカヤはプーチンを批判するためには、オリガルヒの肩を持つこともいとわないのかな?」という心配があったのだけど、この疑問に関してはこの章で完全に否定された。

ポストスクリプトでポリトコフスカヤは、ホドルコフスキーのことはあまり批判せず、プーチンの対応を中心に批判してた。普通の人々の側に立つという彼女のスタンスを考えたとき、ホドルコフスキーの悪事について無視するわけにはいかないはずなのに、どうしてホドルコフスキーの肩を持つような書き方になったんだろう、と不思議だったのだけど、本編でこれだけオリガルヒ批判をしてるなら、ポストスクリプトであのぐらい穏やかな表現に終始しても彼女の主張は明白だね。とにかく、すっごく強烈な章! 今まで読んできた中で、最も印象に残る章の一つ。

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