オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Saturday, January 15, 2005

"Abramovich"が面白くなってきた

冬休みの間、パラパラとページをめくったりしつつ、一昨日学校を往復した際に頑張って読んで、254ページまでたどり着いた。一昨日の一日で160ページから251ページまで読んだのが大きい。

この本は長らく'寄せ集め'の感が強く、あんまり楽しくなかったのだけど、ようやくオリガルヒに関する説明の部分が終わり、アブラモビッチとチェルシーの関係の記述に入った。そこで、文章の質がググっと変わったような気がする。それまでのお堅い文章ではなく、当てこすりをするような、皮肉っぽい文章になったの。そして、それがとても面白い。
著者のミッジリーとハッチンズは、王室の暴露本を書いたりするような人々で、タブロイド向けの文章が似合ってるんだと思う。特にミッジリーはデイリー・メールとかデイリー・ミラーに書いてたことがあるだから、そういう方向性が合ってると思う。

そんなわけで、文章が軽くなって、読みやすくなったところで弾みがついた。ところどころ、難しいところもあるんだけど、終わりまで一気にいけるかな。出来れば今週中に、少し時間を取って読み終わらせたい。

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今回読んだところには、そんなに重要な事実はなかった。チェルシーを買う際に、どの代理人と連絡をとったとか、ケニヨンがどうたらとか、エリクソンがどうたらという、軽い話が多かった。後、ラニエリがどうたらとかね。この辺りの話は私が既に知っているものも多かった。既にチェルシー・ファンだったから、ニュースを追っていた。
アブラモビッチがチェルシーを買ったところで、彼が私の人生にやってきたの。

フットボール関係の話は、オリガルヒ研究とは関係ないのですっとばすと、重要なのは3点ぐらい。

1つ目は、146ページからの第8章のA People Set Apartに書かれていたこと。これはユダヤ教の団体の話。ロシアにはハバドとRJCという二つのユダヤ教の団体(←これは、ロビー団体といったらいいのかな)があって、それでアブラモビッチはハバドのほうをサポートしており、プーチンも同調しており、ハバドのシナゴーグにプーチンがやってきたりする。一方で、グシンスキーはRJCを影から主催していた。
これは結構難しい情報。グシンスキーは異端児だったけど、場合によってはエリツィン政権のほかの面々と共に行動してたし、このユダヤ教の団体がオリガルヒの行動を決める上で重要な働きを果たしたとは思えない。けれども、特にハバドなんかは、何気に力を持っているような気もするし…。評価は保留しなくちゃいけないね。
一方でこの話が、デイビッド・ホフマンの"The Oligarchs"に全く出ていなかった点が興味深い。ホフマンが勤めているのはワシントンのワシントン・タイムズで、ここはかなりの保守だし、ユダヤ教の勢力が強いはずだから、ユダヤ教について深く書けなかったんだと思う。その辺りが"The Oligarchs"の限界だね。
(ま、他にも欠点は多数あるのだけど。)

2つ目はアブラモビッチがチュクチ州の州知事になった経緯。実はアブラモビッチは、チュクチ州の知事として、州内の企業に税の優遇処置を与える権利を得ていたの。シブネフチなんかも、会社の一部をチュクチ州で登録することで、かなりの額の節税に成功した。ルクオイルなどよりも、ずっと低い税率の金しか払ってなかったんだって。例えば、2001年は9.9%で、2002年は12.6%でと。これは、ルクオイルの24%よりもずっと低い。
だからアブラモビッチは、慈善としてチュクチ州の知事になり、チュクチ州に多額の税金を納めることで、その地域を潤わせているという側面と同時に、チュクチ州に税金を納めるということで、多額の税金逃れをすることに成功しているわけだ。とてもしたたか。この辺り、すごいね、アブラモビッチ。

3つ目はスラブネフチの売却の件。これは2002年の話で、プーチン登場以後の事件だね。ここでは、フリードマンのTNKと共同でアブラモビッチが、当時、まだロシアの国有の石油会社だったスラブネフチを民営化したという話。民営化という名のもとで私物化し、搾取するというのも今までと同じ話。
2002年に民営化が行われているんだね。そのことすら知らなかった。それもそのはずで、今まで読んだオリガルヒ本は"The Oligarchs"一冊だし、あの本は2002年ものだからそれ以後の話を私は知らない。
ニュースはいろいろ検索して読んでるけど、それでも抜け落ちてしまう部分がでてくるね。それがスラブネフチの民主化だというわけで、この話はきちんと調べておかなくちゃ。
確か、この件では、アブラモビッチとアレクペロフが対立しかけてたと聞く。プラウダのインターネット版にそんな記事があったとのを覚えている。

というわけで、内容が少し薄いけど、本のまとめ。

ユガンスクネフチガスの売却についても調べなきゃいけないよね。オークションでバイカル・フィナンス・グループの代理人として出てきた人はスルグトネフチェガスの社員で、スルグトはバイカル・フィナンス・グループがオークションに参加するために、預け金を払わなきゃいけなかったとき、ガスプロムが金欠だったから、お金を貸したらしい。そして、そのお金はガスプロムの持っていたどこかの油田開発の権利をスルグトに売ることで返したそうな。
もっと、ちゃんとしたニュースソースを付け加えて書きたいと思っているのだけど、何せこのところ『めぐりあう時間たち』を見るのに忙しくて、時間が足りない。
"Abramovich"の後は、ポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"を読もうと思っていたけど、その前にマイケル・カニンガムの"The Hours"をいれちゃうかも。"The Hours"は、フィクションだから速く読めるだろうし、230ページだし、今、『めぐりあう時間たち』に燃えているうちに読んでしまいたいの。

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