オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Friday, January 21, 2005

"Godfather of the Kremlin"読み始め

火曜日から、ポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"を読み始めている。
あんまり時間が取れなくて、特に火曜日は同じ授業を受けている人と一緒に帰ったので、帰りの電車の中で読めなかったりのだけど、ちょこっと見た感じでは、非常に難しい文章だわ。1時間で10ページぐらいしか読めない。慣れればもう少し早く読めるのだけど、この調子だと終わりまでどのぐらいかかることやら。

使われている単語はそれほど難しくないのだけど、文章の構文がなんだか分かりにくいの。挿入が多い感じもする。だけど、理由ははっきりしない。
あとは、テーマのせいかな。今のところ55ページまで読んだのだけど、最初は1990年代前半のモスクワのギャングの紛争の話が書いてあった。
チェチェン・マフィアがモスクワに進出した頃で、もともとのスラブ系(つまりロシアとかウクライナとか)のマフィアと大きな抗争になったんだとか。なんでそういう話がこの本に出てくるかというと、ボリス・ベレゾフスキーは、チェチェンのマフィアと仲良くなって、支配基盤を確立していったというのが一つの見解だから。クレブニコフはこの見解を支持している。

ロゴバスというのがベレゾフスキーが有していたオフィスなんだけど、その近くで打ち合いが何度もあったんだって。ベレゾフスキー自身暗殺未遂にあったのは結構有名な話で、彼のメルセデス・ベンツがオフィスから出て少し走ったところで、道に駐車されていたオペルにつみこまれていた爆弾が爆発し、彼の車を運転していた運転手が死亡し、その横に座っていたボディガードは失明し、ベレゾフスキー自身も大怪我を追った。
このときの半壊したメルセデス・ベンツの写真が、"Godfather of the Kremlin"の中に載っているはずなのに見当たらない。Amazon.comで検索すると出てくるのだけど、写真が載っているのはハードカバーだけなのかもしれない。まったくもう! これは罠だわ。ペーパーバックには写真を挟まないなんて思っても見なかった。"The Oligarchs"のペーパーバックにはきちんと写真が挿入されているのに。しかたがないから、後でAmazon.comのほうで写真のページを検索して保存しとかなきゃ。
ベンツのページの画像だけは、昔保存しておいて、手元にあるのだけど、写っているベンツはそんなに大破したという印象ではなく原型は留めている。ただし、左の前輪のタイヤはパンクしていて、説明によると、左の前席には運転手の死体が乗っているのが見えると。前の左のドアの窓枠は剥がれ落ちそうになっている。

このような事態が起こることに関して、12ページにRUOPモスクワのトップだったブラディーミール・ルシャイロ将軍の発言が引用されている。
『多くの人は、ビジネスマンが殺される理由を、'単に彼らがビジネスマンだったからだ'と考えている。でもそうじゃない。請け負われて行われる暗殺の調査結果は次のようなことを示している。穏やかな言い方をすると、その殺人を依頼、もしくは実行したまさにその人物と、被害者には何らかの不可解な関係がある。きちんと法律を守る市民、つまり法を犯さず、税金を納めるような市民は、誰も殺さないものだ。』

そうだねー。これには、私も完全に同意する。2つ前の投稿から話を繋げると、クレブニコフが殺されたのは確かなんだけど、だからといって、モスクワに行ったら、皆が殺されちゃうかといったらそうではなくて、殺されるには理由があるんだ。
こういうふうなことを書いているときにいつも思い出すのが、プラウダのオンライン版に出てたアレクペロフの話で、アレクペロフを非難するような新聞広告をイズベスチャに載せようとしたアレクペロフの元パートナーが、その後誘拐されるか殺されるかしたというあの話。

これが私にとってのオリガルヒのもう一つの一面だ。ただ単に政治的にコネを使って莫大なお金をせしめただけでなく、周りの人々を排除していくような。
この一面に関して、"Godfather of the Kremlin"はいろいろな調査をしているように思われる。


"Godfather of the Kremlin"に書かれていうのはデタラメだという向きもあるけど、私はきちんと調べられているように思うよ。これは、私が基本的には調査報道(investigative journalism)をすごく重要視していて、この方向に進んでいるものを高く評価したがるからというのもあるかもしれないね。
アンナ・ポリトコフスカヤに対する視線も似たように厳しいものがあって、「彼女の本はデタラメだ!」みたいに思う人も多いと思うけど、やっぱりあれは事実だと思うし、全体像の一部でしかないかもしれないけど、確かに苦しんでいる人が大勢いて、そういう人たちのことは無視してはいけないと思う。ジャーナリズムというのは、基本的にそういうふうに、弱者に味方するようなものであるべきだと思う。

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というわけで、のっぱなから期待できる内容の本。こういう本を待っていたのよ!
こういう"Godfather of the Kremlin"みたいな本を読むと、"The Oligarchs"とか、"Abramovich"には、ほんと、何にも書いてなかったんだなーと思う。何にも調べてないじゃん! ってね。
だけど、思い出さなくちゃいけないのは、やっぱり、この手の調査報道は仲間外れみたいなもので、世の中ではあんまり認められてない情報なの。そういう意味で、入門ということでは"The Oligarchs"みたいに、波風立たない本にも価値があるなとは思う。"The Oligarchs"の書評でも書いたけど、どれが調査報道的な暴露なのかを理解できる程度の背景知識を持っていないと、自分の立つ視点を決めにくいと思うから。
そんなわけで今後が楽しみ。もっと早く読めるようになりたいな。少なくとも、1時間10ページよりももっと多く。

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