オリガルヒ

1990年代のロシアについて。主にオリガルヒ。時々チェチェン。まれにイラク、パレスチナ、その他紛争地。 自分はこれからどんな惨めな人生を生きていくことになるのだろう。考えている。

Tuesday, December 28, 2004

何にもしない日々

なんだか小康状態にある感じ。ユガンスクネフチガスのこと、調べてない。"Abramovich"、読んでない。

来年は1月11日から学校があるんだけど、それまで"Abramovich"を読まない可能性も出てきた。それは出来れば避けたいのだけど。
冬休みの間に一日朝から晩まで本を読むってことをやってみたいなー。あと7時間もあれば"Abramovich"は読み終わるから。

"Abramovich"を読み終わったら、デイビッド・サッターの"Darkness at Dawn"と、アミラ・ハスの"Drinking the Sea at Gaza"を注文しよっと。
"Abramovich"の次は、ポール・クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"だけど、その次の本を確保しといてもいいよね。

"Darkness at Dawn"は、このブログでも何度か名前を出してきたからいいとして、アミラ・ハスの"Drinking the Sea at Gaza"というのは、1990年代半ばのパレスチナのガザの話を綴ったもの。イスラエルのハアレツというリベラル系の新聞に書いているアミラ・ハスというイスラエルの記者が、ガザの町に住んだときのことが書かれているそうだ。とても良い本らしいので、是非読んでみたい。

グレッグ・パラストの"金で買えるアメリカ民主主義"とか、ナオミ・クラインの"ブランドなんか、いらない"も読みたいなー。バリー・グラスナーの"アメリカは恐怖に踊る"にも興味を惹かれている。

Thursday, December 23, 2004

クレムリンの大ボス、アブラモビッチ

昨日は学校までの往復の間、"Abramovich"をみっちり読んで、81ページから139ページまで読んだ。学校でも読みたかったのだけど、いつもは退屈な授業が、昨日はゲスト講演で非常に面白かったから、最後まで普通に授業を聞いて本は開かなかった。ずっと机の上に出しておいて、時おり淵を弄ぶようになぞったりはしたけれど。

なーんて書くと、普段の私の授業態度に非難が集中してしまいそうだ。でもかなり真面目な学生なんだよ。今学期は8授業を履修してて、うち3つではメモ魔になっている。ものすごい勢いでペンを走らせているんだ。1つは研究会。2つに関しては適度に気を抜いているけど、まじめに聞いている。これら6つは、もしかしたら全部Aが来るかも知れない。
一方で残った2つの授業が悲惨な状態で、出席こそは毎回欠かさずしてるけど、話は全く聞かずに別の作業をしてる。パソコンを開いたり関係ない本を読んでたり…。なんか授業の題材に興味が持てなくて。全部の授業を面白いものでまとめたいけど、それは無理だもん。
そういえば昨年の今ごろは栄光の一時を掴んでいた。10科目履修で9科目がAだったから…。あの時は良かった。このぐらいはできるのよ。与えられた情報をただ覚えるだけならできるの。私の問題は想像力のほうだから。何か一風変わった閃きを目指してるんだけど…。

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とにかく、"Abramovich"だけど、今日読んだところに書いてあった一番大事な情報は、プーチンが最初の閣僚を決める際に、アブラモビッチが面接に関わっていたこと。これは、プロローグのところにもあった情報だけど、この本の一番の目玉らしい。とにかく、「この本で初めて明かされた事実」だそうだ。

それで私は少し考えを変えたのだけど、アブラモビッチっていうのはプーチンと一心同体なんだ。これまで、私はアブラモビッチは政治には口出ししないで、プーチンと協調路線を取っていると思っていたのだけど、そうではなくて、プーチンの後ろにアブラモビッチがいるの。だから、ある意味でアブラモビッチは政治に口出しする必要がないんだ。当たり前だよね。プーチンこそがアブラモビッチなんだから。
(もちろん、アブラモビッチ本人が実際のところ、政治にあまり興味を持っていないことも明らかだけど)

これに気付かなかったのは、アブラモビッチとベレゾフスキーのつながりがとても深くて(←1994年、1995年の彼らの蜜月の時代は、無視するわけにはいかない)、ベレゾフスキーとプーチンは敵だったから、アブラモビッチはプーチンと敵対していると思い込んでいたせいだ。
でも、実際にはプーチン&アブラモビッチを一つの同盟と考えたほうが分かりやすくて、ベレゾフスキーはそこに上手く入っていけなくて、アブラモビッチから切り捨てられたような感じがする。だから、今イギリスにいると。

アブラモビッチっていうのは末恐ろしいね。なんか、特に強みがあるわけでもなさそうで、のほほんとしている感じなのに、あれよあれよという間にいろんなものを牛耳ってしまう。どんな秘密があるのだろう。
人の良さそうな感じで、古くからの知人を永遠に雇い続けているところも、やや人情派って感じなのに…。だから、2000年辺りにベレゾフスキーのことをばっさり切ったやり方がちょっとやそっとじゃ信じられないのだ。

ところで、ベレゾフスキーとプーチンの仲が決定的に悪くなったのは、2000年の原子力潜水艦クルスクの沈没事件によるそうだ。それで、そのときのことを記述するのに、このブログで数日前に名前が挙ったデイビッド・サッターの"Darkness of Dawn"からの引用があった。
"Darkness of Dawn"には、クルスクのことが書かれているのは知っていたけれど、まさか、その数日後に再開を果たすとは思わなかった。なんか運命を感じるよ。

他に面白かったのは109ページに掲載されたエレーナ・トレグボワの本からの引用。この"Abramovich"には、トレグボワの"Bayki Kremlevskogo Diggera"という本からの引用が多数されているのだけど、これは非常に面白そうな本だ。現在のところ、ロシア語のみでしか出版されていなくて、英語版も出ていないのが残念。
アブラモビッチと聞いて、トレグボワが「ベレゾフスキーのこと?」と尋ねた逸話。この会話は、クレムリンの中で行われたもので、反対側にいたのはエリツィン政権のヤストルシェムブスキー。このやり取りは1998年のもので、そのとき既にアブラモビッチはクレムリンで最高の権力を手にしていたらしい。

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その後にはアブラモビッチを崇める章が続く。第7章のA Siberian Kingdomでは、ロシアの北東の端のチュクチ州をアブラモビッチがいかに(良いほうに)変えたが書いてあった。そして、彼がどれほどいい人間かと。
ま、彼が多額のお金を寄付したのは事実だし、長い時間をチュクチ州の人々に対してささげたのも事実だ。それによる良い面は一概に否定しちゃいけないよね。

*ということで、彼がチュクチ州の知事に任命されるところまで一気に来ちゃった。ルーブル危機の話なんか、2ページ以下にまとめられていた…。

いまのところ、こんな感じ。

競売-ロスネフチのご登場

昨日、"Abramovich"を結構読んでその話も書きたいのだけど(昨日の夜、下書きを書き始めたのだけど、上手くまとまらなくて途中で疲れて寝ちゃった)、とりあえず今はユコス関係のニュースについて書いておきたい。

この数日でいろんなことが判明した。
ユガンスクネフチガスの購入者はロスネフチってことになった。ロスネフチが昨日、「バイカル・フィナンス・グループの株を100%所得した」と発表している。
ついでに、ガスプロムは「オークションの直前にガスプロムネフチを売却した」としている。どこに売却したかは分からない。

ガスプロムとロスネフチの関係について書くと、この両者は来年の初めに合併する予定だった。ガスプロムを親会社にして、その下にガスプロムネフチという会社を作り(これは、2004年11月に既に設立されている)、そこにロスネフチを統合することになってた。

昨日明らかになった二つのニュースは、
1. ロスネフチは、ガスプロム傘下のガスプロムネフチに吸収される予定だった。
2. しかし、ガスプロムはガスプロムネフチを売却した。
3. よって、ロスネフチとガスプロムは無関係。
4. その後、ロスネフチがユガンスクネフチガスを買った。
5. でも、ガスプロムとユガンスクネフチガスは無関係なんだからね!!
ということにしたいのだろう。
ロスネフチを前面に出すことで、ヒューストン訴訟のガスプロムへの影響を回避する意向だ。
※ここで「無関係」といっても、両者の間の親密な関係がなくなったわけではなく、『ヒューストンの事件が解決するまでしばらく距離を置きましょう』ってことだね。

ついでに、「ロスネフチは完全な国営だから、ロシア政府の主権免除を主張できて、ヒューストンの管轄権外になる」という公算もあるようだ。

*ここで「国営」という点について書いてみると、ガスプロムもロスネフチも国営と言われるけど、ロスネフチの場合はロシア政府が株式を100%持っている完全な国営。一方で、ガスプロムの株式のうち、ロシア政府が持っているのは38%。国が筆頭株主だし、経営を実質的にコントロールしているけれど、完全な国営ではない。国営って言葉の使い方は時に曖昧で難しいなー。


まとめると、
ユコス@ヒューストンからの熾烈な攻撃を、何とか逃れようとしているガスプロム…。なかなかに興味深い。

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一つ気になるのは、なんで今になって「ガスプロムネフチをオークション前に売却したよ」みたいな報道が出てくるのか。

本当にオークション前に売却したのかな?

「オークション前に売った」という情報はフィナンシャル・タイムズの報道によるもので、それはガスプロムの発表を元にしているのだけど、今になってこういうことが後から明らかになるのは変な気がする。

特にこのフィナンシャル・タイムズのニュースの前に、インターファックスが、「ガスプロムは、ガスプロムネフチをオークションの前に売却しておくべきだった」という記事を流していることを考えると。

これは私の個人的な疑惑だけど、ガスプロムは、オークションが終わった後で、ガスプロムネフチを切り離しておく必要に気が付き、オークションの前に売ったことにしたんじゃないのかな。書類の偽造になるけど、そんなの誰も気にしないだろうから。

というのも、ガスプロムネフチの売却というのは、現在のところまだガスプロムの役員会の承認を得ていないそうなのよ。ロイターがそう伝えている。
ロイターの記事によると、ガスプロム側の言い訳としては、「役員会の承認というのは売却が終わった後から遡っても構わないことになっている」んだそうだ。

なんとなく、雲行きが怪しくなってきているね。ガスプロムは手抜かりが多そう。

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追伸
ユコスの件に関して、イギリスのインデペンデントはニュース媒体として、とても悲しいことになっている気がする。
アンドリュー・オズボーンという人がモスクワにいて、記事を多数書いてるのだけど、それが何か変なの。特に21日の「アブラモビッチが影武者らしいぞ」という記事には、少しむかついてきた。
曰く、『バイカル・フィナンス・グループが登録された住所には、ロシア革命前の3階建ての建物が建っているが、そこには携帯電話の店、旅行代理店、食品店のほかに、ロンドンという名前のバーが入っている。この事実を受けて、現在ロシアのマスコミは、バイカル・フィナンス・グループの裏にはロマン・アブラモビッチがいるという噂でもっぱらだ』という記事。記事の見出しも、"Rumours abound as mystery buyer is tracked down to 'London' bar"となっていて、「あー、とんちんかんもいいところ」って感じ。涙が出そう。別に、何を書いてくれてもいいのだけど、結構好きな新聞が、三流のタブロイド並みの記事を出してるのを見ると悲しくなる。
インデペンデントの現在のユコス関連の最新ニュースは、ガスプロムネフチの話でも、ロスネフチの話でもなく、「ボグダノフが影武者だ!」という記事で、ボグダノフがいくらお金を持っているかが書かれていたりする。
まー、独自の路線を行く勇気を持つっていうのが非常に大事なことだってのは認めるけどね。

Tuesday, December 21, 2004

ホドルコフスキーの秘密

あー、もう生活ぐっちゃぐちゃ。昨日はあの後、5時半まで作業して、その後気がついたら、7時半に「うるせーなー!!!」と思いながら目覚し時計を消してた。いつのまにかに眠ってしまったらしい。良かった、目覚ましをかけておいて。

でも、結局作業は終わってなくて、遅刻するわけにもいかないから、そのまんま学校に行った。マニュアルは諦めて、同時に出さなきゃいけなかったレポートの方だけ仕上げることにした。3限の1時間半、法律の授業の教室の中で、ノートパソコンを開いて打ち込みまくっていた。写真サイトのジャーナリズム的な可能性について(なんだそりゃ)。行きの電車の中で原稿を書いておいたの。
結局、4200字を書いて「適当にやったんじゃないんだよ」みたいなふりして出した。なかなかの力作だわ。時間がなかった割には、よく書けている。
誰も私を責められないはず。これが今学期3つ目のレポートだけど、前の2つも当日の明け方まで手付かずだった。これが私のやり方なのさ。でも、これまでずっとこうやってきたし、仕上げられなかったことなんて、1回しかないもん。それだって、2度目の締め切りには間に合わせられたから、ダメージはゼロ☆

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帰り道は、"Abramovich"を読んだ。ところが、登戸を過ぎた辺りから急に眠くなって、久しぶりに電車の中でぐっすり寝てしまった。新宿に着いて、ドアが開いた音で目が覚めたくらい。新宿まで寝るなんてこと、過去3年間でも、滅多にないのになー。電車の中で寝るのは、今学期3度目だと思う。帰りの電車の中で寝たのは、今日が初めて。

そんなわけで、全然本を読めなかった。仕方ないよね。2時間しか寝てないんだし。それでも今日は82ページまで読んだよ。既に、エリツィンが再選された後に話が移っている。ものすごい勢いで時間が経過していく。しかも、このあたりから、もう確信したのだけど、ミッジリーとハッチンズはデイビッド・ホフマンの"The Oligarchs"をテキストにして、章を書いたね。本当に似通っているんだもん。「読む必要あんのかなー」なんて思いながら読んだ。
電車の中で寝てしまった理由の一つは、本がつまらなかったせいもあると思う。70ページ台には、知ってる情報しかなくて、「もう、いいよ。こんなこと書かなくて」と思いながら、ざーっと読んだ。
(でも、ところどころクリスチャ・フリーランドのほうからの引用があって、参考になった。)

一方で、80ページに入った辺りから、少し面白くなってきた。アブラモビッチがベレゾフスキーと共に、シブネフチの傘下のノヤブルスクという会社の株をせしめた話が書いてあった。この話は全然知らなかった。
ホドルコフスキーがユガンスクネフチガスで似たようなことをしたのは読んだことあったけど、やっぱりアブラモビッチも同じなんだね。

それはいいとして、80ページと81ページには、「アブラモビッチって、気さくでいい奴だ」みたいなことがつらつらと書いてあった。曰く、「シブネフチの会社の中では、皆が家族みたいだ」。「会社の上下関係が分かるのは昼食のときだけ。昼食は、それぞれの地位に応じた部屋で食べる。だが、アブラモビッチは専用の昼食室で食べることになっているけど、来客が来ないときは、同僚をその部屋に招いている」とか。社長室の扉は常に空けられていて、そこからアブラモビッチが、足を机の上に上げてワイド・テレビでサッカーの試合を見ているところが目撃されているのだとか。

この辺りがリップサービスなのかな。これ、信じていいのかね? 実はこの手の話ってのが既に結構出てきてる。「コピー機の側に立っているのは誰だい?」と聞かれて、シブネフチの社員が「あれが、アブラモビッチですよ。わが社の社長です。」と答えたという逸話は、この本にも収録されていたけど、本当に有名だよね。
こういうイメージでアブラモビッチは自身を売り込みたいのだと思う。それは分かった。だけど、それが真実の姿なの?

アブラモビッチってのは秘密も多いはずだよ。人には言えないことも。密約も多いだろうし。そういう人が、こんなに開けっぴろげだなんてありえるかなー。

ま、それはいいとして、注目はその対象例として描かれたホドルコフスキーについて。
81ページには、「ホドルコフスキーのユコスは、階層が非常に明確な会社だった」とある。ホドルコフスキーが、どこかの会社を買収した際には、その役員の室に監視カメラを設置しちゃんと働いているか監視することにしたとか。
あるいは、これが一番衝撃的だったのだけど、「ホドルコフスキーは、大の男を泣かせてしまうことと、人前で脅迫をすることで有名だった」とのこと。

これはアブラモビッチを良く見せるために、悪い例として出されているので、もしかしたらちょっと脚色されているかもしれない。また、ホドルコフスキーは現在刑務所の中にいて、彼に関して何を書いたところで、そんなに問題にならないだろうから、その点で大げさな記述になっているかもしれない。

でも、「他人を泣かせる」とはねー。なんか素敵な表現だね。古風でロマンチックで。
彼に関しては気短な印象を受けているし、ずるがしこくて、でも度胸はあって、冷酷で、反社会的な人間だと思っていた。そんな中に"Abramovich"のこの情報が上手く当てはまらない。どのように判断するかは保留にしておくしかないね。新しい情報が出てくるまでは。
ホドルコフスキーに関しては、"The Oligarchs"の中でたくさん触れられていた(実際、彼の生い立ちを追った章があり、彼は主要な登場人物6人の一人)のだけど、あまり恐ろしい人間としては描かれていなかったんだよね。"The Oligarchs"の方がよろしくないのか、どうなのか。"The Oligarchs"が、オリガルヒ側に寄った本だというのは否定しようがないけれど。
とにかく、"Godfather of the Kremlin"にも、彼の話は出てくるから、それを踏まえた上で決めようっと。

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そんなわけで、明日が学校の年内最終日。行きと帰りでどれだけ読めるかな。2004年ももう終わりだね。年が変わっても、地球はそのまま回転し続けるし、大きな変化はないけれど、もう二度とその年の年号に「2004」という文字を書くことはないのだと思うと、少し寂しくなるよ。
もう二度と戻ってこない2004年の夏、春、秋、冬。どうして、ただ時間を贅沢に無駄に過ごしているだけで、悲しい思いがするんだろう。

Monday, December 20, 2004

"Abramovich"、読み始め

あー、あんまりにも時期が悪い。ものすごい急がしい。なんでだろう? 意味不明だ。
いや、待てよ。今、こんなふうにして、呑気にブログを書いたりなんかしてるから、時間が一層なくなるのかも。

とにかく、やんなきゃいけないことは、2つ。バイカルについて調べること。先の研究会の写真サイトの作成マニュアルを作ること。
…。
バイカルについて調べるのは明後日でいいよね。だって、マニュアルの締め切りは明日までだし、まだ1文字も書いてないんだから。まずいよ。今夜は眠れないかも。どうしよう。

なんかね、プロジェクトが完成しそうになったところで、私自身がプロジェクトをぶっ潰したくなってしまったのよ。「こんなバカみたいなことやってられない!」って。
これは私の場合良くあることだったりする。何かが完成しそうになったところで、そのプロジェクトが輝きを失せるってことあるよね。「あれだけ頑張って、手に入るのはたったこれだけなの?」って怒りが込み上げてくるんだ。こういう時、こう思うの。「だったら、こんなもんいらない!」

加えてなんとなく非常に不愉快になるのは、背中を痛めちゃったこと。インターネット・サーフィンをしているときは、いすに深く座っているんだけど、キーボードの位置と机の高さが悪いのか、入力の際は猫背でパソコンに向かって作業することが多い。別に今までそんなに長いこと入力を続けるってことはなかったから、これが問題だとは思わなかったのだけど、今回のプロジェクトで1日8時間とか10時間とか作業しているうちに、背中に鈍い痛みが出てきて、それが四六時中消えなくなってしまった。なんか、背骨自体が曲がったような気もするけど、それはないよね? 大丈夫だよね? 不安だよ。まだ22歳なのに。このまま、あと40年間を痛い背中を抱えて生きていくことになるのかしら?

こういうふうな色々な想いが私の中でぐちゃぐちゃに飛び跳ねていて、とてもじゃないけど、誰かのためにマニュアルなんか作る気になれん。皆、ぶっ倒れてしまえ! って感じなわけ。ダメだね、私は。けっこうな受動的攻撃性の持ち主だから、責任者には向かないよ。すねちゃって、プロジェクトを放棄しちゃって、なだめてもらうのを待ってたりするんだから。あーあ、私の心の中で何が起きているかは全部分かっているのに、筋書きを変えられない。こんな私って、ほんと、未熟だね。

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以上は、今思っていることであると同時に、"Abramovich"の56ページまでを読みながら感じたこと。
この本は、前言撤回だけど、結構読みやすい。プロローグのところと最初の謝辞のところは偉く難しかったけど、その後は、がんがんに読んでいける。
1時間で25ページぐらい。"Putin's Russia"と同じくらい。

今回は、第一章のBaptized into Greatnessと第二章のThe Making of the Man、第三章のHitting the Jackpotまでを読み終わった。
第一章はアブラモビッチが生まれてから、学校を卒業するまで。第二章は軍隊に徴兵されたときのこと。第三章は、あのローンズ・フォー・シェアズのこと。

なんか、ものすごい勢いで月日が立つんだけど…。おかしくない? 当初期待していたよりも情報が少ないなー。
子供の頃の話なんか、なかなかに詳細に書いてあったし、面白かった。軍隊での話も読んだことがなかったから、非常に面白かった。
一方で、1992年から1995年までの一番興味深い時期のことがそっくり無視されていたの。がっかりだよ。
この時期のことが分かってなくて、情報を得たいと思っているのに。"Abramovich"の中では、1992のあの有名なディーゼル強奪疑惑にささっと触れた後は、アーベンのヨットの上でベレゾフスキーと会った時のことにいきなり飛んでた。この間に、アブラモビッチは、単なるビジネスマンから、泣く子も黙るオリガルヒに生まれ変わる石杖を築いたんだよ。無視しないでよね。

ついでに、文句をもう一つ。ローンズ・フォー・シェアズに関しては、デイビッド・ホフマンのまとめのほうがよっぽど詳細で上手かった。というより、デイビッド・ホフマンの本を手本にしてこちらを書いたんじゃないか? と思われる部分が3ページほどあった。ロシアの基礎情報を全く知らない人向けに、オリガルヒのことを簡単にまとめようとしてるんだけど、それが結構ウザったい。やっぱりサッカー本なんだなー。
この本はパーっと読んで、"Godfather of the Kremlin"に入ろっと。

あ、でも、"Abramovich"に読む価値がないとは言ってないよ。
実際、最初の奥さんの話や、今の奥さんのイリーナがエアロフロートのキャビン・クルーだった頃に、「誰か大物を捕まえて、不自由のない人生を送ってやる!」という強い決意を持っていたことなどが分かって、とても面白かった。
彼のおじとか、学校の教師の話も面白かった。こういう話も聞きたいね♪

そうそう、冒頭の長々とした文章への回答は、アブラモビッチってのは、何気にいい人オーラが出てるらしいの。
彼に関わった人は皆、「いいやつだった」とか、「チャーミングだった」とかと記憶しているらしい。礼儀正しいそうだし、怒ることもないんだってね。
すごいなー。怒りを抑制できるなんて。私は、怒りを我慢できなくて、物に当たってみたり、大声をあげてみたりと、酷いことになっているから、アブラモビッチのこういうところは羨ましい。彼みたいな人間的魅力っていうのを持ってみたいな。

ふふふ。
とはいってもねー。結局は、悪人なんでしょ。あはは。

ユコスの終焉

オークションの結果は、なかなかに意外なものに。バイカル・フィナンス・グループ(Baikalfinansgroup)というところが、93億5000万ドル(正確には2607億5344万7000ルーブル)で落札したとのこと。

バイカル・フィナンス・グループって何? 彼らのことは誰も知らないらしい。分かっているのは、トベーリの会社だってこと。トベーリは、人口約50万弱のモスクワから程近い街。モスクワの北西の方にある。

もう一つ、注目はガスプロムはオークションで、入札しなかったんだってさ。会場にはやってきたけど、座っていただけ(いや、実際には電話をかけに行ったとか…)。
これは、私がほんとにうっかりしてたんだけど、ガスプロムってのは現在世界最強の天然ガス会社だった。埋蔵量も生産量も世界一位だったはず。石油の生産量は大したことないんだけど、ガス会社としてはものすごいデカいの。だから、下手な真似はできないんだね。私は石油のほうからしか見てなくて、ガスプロムの天然ガス会社としての巨大さを忘れてた。
ということは、ヒューストン裁判所の裁定が、ドイツ銀行やJPモルガンにプレッシャーを与えたのと同じように、ガスプロムにも、圧力はかかってたんだよ。
ガスプロムは、ロシア国内だけで商売をしているのではなく、天然ガス販売を世界中でやっているから、アメリカの裁判所の判決というのを無視するわけにはいかないのだ。ユコスがヒューストンでやったことは、単なる嫌がらせかと思ったけど、ガスプロムに入札させないという点では効果的なものだった。実際、ガスプロムは入札しなかったから。彼らの判決がなかったら、当然入札してたでしょ。

その一方で…。
だが、このバイカル・フィナンス・グループというのを見てみると、これはガスプロムの代理をやっている可能性が高いね。ブルームズバーグのレポートの中で、アルファ・グループのアナリストのクリス・ウェーファーという人が、
『普通に考えたら、バイカル・フィナンスというのは、スルグトかガスプロムかあるいは両者の隠れみのだろうね。彼ら以外の会社はどこだって、あれだけのお金を持っていないのだから』と言っていた。

本当かな? とにかく、落札額は1兆円近いお金。それだけのお金を急に用意できる会社が、これまで無名の存在でいたなんてありえないよね。なにか裏があるに決まってる。
やっぱりガスプロムなんじゃないかな。

もしバイカル=ガスプロムだったら、ヒューストンの決定はあまり大筋で影響を与えなかったと言えるかもしれない。この辺りの分析は1週間ぐらいして、全てがもっと明らかになってからかな。

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今回の競売の持つ意味というのは、とにもかくにも、ユコスの終焉ってことだね。このときがついに来てしまったの。この競売を何とか潰す以外にユコスが生き残る道はなかった。そして、それはうまく行かなかった。

ユコスの生産量の6割を占めるユガンスクネフチガスを失った今、ユコスが出来ることは何もないと言っていいと思う。
プーチンがやろうとしていたことは成功したんだ。呆れるばかり。

さよなら、ユコス。そしてホドルコフスキー。でも、大丈夫、ミハイル! あなたは、もっと酷いことを乗り越えてきたし、もっともっと酷いことをいろんないろんないろんな人たちに対してやってきたんだから!

こういうときにふさわしいのは、スパイス・ガールズの"Goodbye"だね。
"The times when we would play about, the way we used to scream and shout, we never dreamt you'd go your own sweet way." "Goodbye my friend. I know you're gone, you said you're gone, but I can still feel you here. It's not the end. Gotta keep it strong before the pain turns into fear."

そう、ローンズ・フォー・シェアズで大騒ぎした日々がセピア色に輝いているよ。ダボスの7人組のことも、エリツィンのことも皆覚えてる。プーチンの登場でこんなことになるとは思ってもみなかった。さよなら、ホドルコフスキー。もう刑務所の中なんだね。ニュースでもそう言っていた。でも、私は、あなたが今も外を走り回って、更なる悪事をたくらんでるって感じることがあるの。これで終わりじゃないよね。元気でね。大丈夫、怖がることなんか何もないさ。

というわけで、一つの時代の終わり。
一つの時代の終わりというのは、いつだって寂しいものだね。

Sunday, December 19, 2004

競売-同じ穴の狢

これは、プーチン本人だって認めなくちゃいけない。『自分はオリガルヒと何ら変わらない』と。

オークションは20分くらい前から始められたはずなんだけど、まだニュースがあがってこない。直前までの報道によると、どうやらガスプロムが落札見込みって話になっていた。
AFPのレポートによると、86億5000万ドルの最低入札額に対して、約90億ドルでガスプロムが落札すると見られている…、とのこと。

はっはー!

「こりゃ面白い!!」としか言いようがないね。怒りと苛立ちを込めて。悲しみと虚しさも入ってくるけど。そう、あと、絶望も。

これじゃ、オリガルヒと同じだね。まぁ、全部予測できていたといえばそうだし、今、土壇場になって怒りが込み上げてくる自分はお子ちゃまなのかもしれない。最後の最後になるまで怒れなかったのは、やっぱり全てが明らかになるまで動けないと思ったから。決定力がないんだね。もう止めなきゃ、こうやって迷うのは。

それはいいとして、私にとっては問題なのはその金額。86億5000万ドルの最低入札に対して、90億ドルはないんじゃないの? 4つの入札があったそうだけど、うち3つはガスプロム関係だとか。
これって、ほんと、ローンズ・フォー・シェアズと全く同じ。再現してるみたい。それが狙いなら、おめでとう、プーチン! 大成功だよ。

ある意味では象徴的ではある。連邦から安いお金でかっぱらったものを、連邦が安いお金でかっぱらい返したのだから。そういう意味では、正当ではあるね。
ただし、これって「目には目を」って奴なんだよ。それが我慢ならないの。

法治国家を目指すなら、もっと別なやり方があったでしょうに。それを選択しないで、こういうことをしたプーチン政権というのを、我々、世界中の人は忘れちゃいけない。ことあるごとに、今回のことを話題にしなくちゃ。

一応ここまで投稿しちゃおっと。続報が出たら、また別途、投稿する予定。

デイビッド・サッターの"Darkness of Dawn"とは?

Yahooのアメリカ版には、非常にいいサービスがある。キーワードを指定しておくと、そのキーワードが含まれるニュースが流されたときに、メールでお知らせしてくれてるの。そんな中で教えてもらった記事が、ガーディアンのこれ

いやはや、単に書評なんだけど、読む価値あるよ。書評の対象になっているのは、私が今月上旬に読んでいた"Putin's Russia"と、ペーパーバックが先々月発売されたデイビッド・サッターの"Darkness at Dawn"。どちらもロシアに関する本で、プーチンやFSB、オリガルヒに対して批判的な視点で書かれたという共通点がある。

書評を書いているのは、アンガス・マックイーン。ドキュメンタリー作家だとのこと。記事が公開されたのはガーディアンだから、どういう系統の記事になるかは読まなくても分かるといえば分かるね。

面白いと思ったのは、彼も私も同じ本を読んで書評を書いたわけだけど(なんて書いたら失礼かしら? プロの作家に対して。まぁ、とにかく…)、同じところを引用してる。
それは、10日前の『半分突破"Putin's Russia"』の投稿で触れた、「どうぞ。外の人たちに、私たちのお金がどんな類のものか知らせなさいよ」という一文。やっぱりこの文章は、あの本の中でも最高に注目な個所なんだよね。

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そんなわけで、書評が書かれているのだけど、一緒に挙げられているのは、デイビッド・サッターの"Darkness at Dawn"。私は、彼の名前もこの本も全然知らなかったのだけど、もしかしたらとても面白い本かもしれない。

彼はこの本の中で、『1999年のモスクワのアパート爆破事件は、FSBが仕組んだでっち上げだ』と主張しているそうだ。
この主張に関しては、チェチェン総合情報の方で読んだことがあったけど、本としては読んだことはない。読んでみるのもいいかもね。
このデイビッド・サッターという人は、1990年代のあのオリガルヒの時代に、ロシアの普通の人々がどんな暮らしをしていたか、どんな悲劇があったかということを書いているそうだ。実はこの領域というのは、私がまだカバーしてない分野だ。オリガルヒ側は読んだ("The Oligarchs")し、マフィア側も読んだ("Violent Entrepreneurs")。でもまだ普通の人については読んでない。アンナ・ポリトコフスカヤの"Putin's Russia"の中で、先にもあげたターニャの話や、その他の人々のことをちょこっとだけ読んだけど、もう少し情報を蓄えたいと思っている。それには、このデイビッド・サッターの"Darkness at Dawn"がぴったりかもね。

ところで、なんだかおかしくなってきてしまうのは、出てくる本がどれも保守派の人々によるものばかりってことだね。
このデイビッド・サッターという人は、フィナンシャル・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナルに書いてたんだってさ。二つともかなりの保守派だよ。
ついでに、クリスチャ・フリーランドもフィナンシャル・タイムズで、デイビッド・ホフマンはワシントン・ポストだったね。ワシントン・ポストもかなり保守的。
そうそう、デイビッド・サッターはフィナンシャル・タイムズのモスクワ支局長を勤めたことがあるよ。1976年から82年まで。フリーランドと同じだね。

なんで保守ばかりなのかしら…、と思ったところで、理由は二つありそうな気がする。
一つは、「私がリベラルだと思う報道機関が非常に少ないから」。これはありうるね。ガーディアンだって、ときどきリベラルだと思えなくなるときがある私、世の中のほとんどの新聞が保守にみえてくる。
二つ目には、最初に触れたのが保守派の本("The Oligarchs"は保守派)だから、そこから別の本にたどり着こうとしても、保守派の本ばかりが出てきてしまう。つまり、私は今、保守派の領域のど真ん中で立ち往生してしまったというわけ。でも、考えてみればそうだよね。フィナンシャル・タイムズの語り口が好きな人は、"Sale of the Century"を読むだろうし、そういう人は"Darkness of Dawn"も読むかもしれない。フィナンシャル・タイムズつながりで。そして、両者を薦めるとかね。
"The Oligarchs"のところで、クリスチャ・フリーランドとデイビッド・ホフマンがいっしょに行動していたことを書いたけど、この二人の視点というのは、もしかしたら似通っているのかもしれない。だから、「この本のどちらかを気に入っている人は、もう片方も薦める…」。そうやって薦められた本を読んでいると、結局、保守派の文献のつながりの中に埋もれてしまうのだ。
もし2番目の説明が正しいなら、早く抜け出さなくちゃ…。とはいっても、この"Darkness of Dawn"が出てきたのは、"Putin's Russia"つながりで、"Putin's Russia"はどう考えても保守とは言えない。ってことは、この説は外れか…。
だって、こちらが正しいとなると、"Putin's Russia"は、保守派の本だということになる。でも、この点も真剣に考えなくちゃいけないよね。ポリトコフスカヤが保守派じゃなくて、リベラルなのは間違いないけど、彼女の本が、一つの本として出版された背景には、ロンドンが有する反クレムリンという大きな流れがあることも無視できないから。

そんなわけで、保守派による本を読んでいるというわけで、この問題点は、書いている人が保守派なので、資本主義への疑問とかっていうのが出てこないところ。結局「資本主義は悪くない。その導入の仕方に問題があった。それがロシアの問題の根本だ。」みたいな感じの結論にまとまるような気がする。それ以外の展開の仕方がないの。
「資本主義には根本的な欠陥がある。それが表出してしまったのがロシアである」とかっていう主張もありえるはずでしょ。これだって一つの見方だし、正当性はあるはず。
バディム・ボルコフは、大雑把にまとめると『資本主義がいきなり導入されてしまったので、人間の性である私欲というのが全開になり、それがロシア社会の底辺からの崩壊に繋がった』という主張だった。彼はこの点ではとても真実をついていたと思うし、リベラルな発想だったと思う。

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とにかく新しい本を知った、ということで投稿。
そうそう、アンガス・マックイーンはこういうふうに書いてるよ。ここは、是非引用しなくちゃ。"Putin's Russia"について、
『ロマン・アブラモビッチのイギリスへの到来と、彼に対するロンドン社交界の歓迎と、チェルシーのサポーターが表した支持を、良いものだ思っている人は、"Putin's Russia"を絶対に読まなくてはいけない。フランク・ランパードの週給にお金が消えていく裏で、シベリアの凍てつく町でどれだけの人生が破壊されたと?』と書いてあった。

そうだよ。これだよ。この視点が、オリガルヒとアンナ・ポリトコフスカヤとプーチンと私とを結び付けているの。
この視点は、なくせない。

Saturday, December 18, 2004

競売-ついに明日

昨日迷ったFedral Property Fundの日本語訳だけど、共同通信は『ロシア連邦資産基金』と訳してた。読売新聞は、『国有資産基金』。日経新聞は『連邦所有基金』。
毎日新聞は『ロシア政府は~』みたいにボカして書いていた。朝日新聞には関連する記事が見当たらない。産経新聞は共同の記事を転載してた。

もともとのロシア語って何だったんだろう。
英語表記から考えたら、Federalが「国有」という訳になるとは思えないし、Propertyに「所有」という言葉を当てはめるのも、政府の機関の名称としてはおかしいよね? なんか、わざとずらしてる気もする。
まぁ、とにかく、この機関に、確立された日本語名が存在しないことだけは分かったわ。

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ヒューストン裁判所の決定だけど、昨日よりも私が状況を理解してきたので、すこーしだけ面白くなってきた。
これは、競売を延期させるものではなく、ガスプロムに買わせないようにするものみたいだね。それもターゲットはガスプロムというより、ガスプロムに出資しようとしている会社に対して。
ガスプロムは今回の競売に参加するにあたって、ドイツ銀行、ABNアムロ銀行、BNPパリバ銀行、カリヨン銀行、ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券、JPモルガンから資金提供を受けることになっていた。
ユコス側の破産申告っていうのは、「ガスプロムに協力しやがったら、お前らを訴えてやる!」みたいなことを意味するのよ。それで、ヒューストンの決定を受けて、この銀行連合はガスプロムへの融資計画を一時的に保留にしたの。状況が明らかになるまで。
モスクワ・タイムズの記事によると、ドイツ銀行とガスプロムの代理人もヒューストンに現れたとか。
(そうそう、アメリカの国務省はユコス側についているようだ)

つまり、今回のヒューストン裁判所の件というのは、ユコス側からの嫌がらせみたいなもんじゃないかしら。「ガスプロムにだけは売らせない!」みたいな。
でも、効果はあるのかなー。確かに銀行連合の方は、足踏みさせたけど、クレムリンの支持を得ているガスプロムが、こんなことで方向性を変えるなんて思えない。お金が足りなくても、平気でしょ。現に、モスクワ・タイムズの記事には、ガスプロムの人の話として「どうしてお金を日曜の競売の時点で用意してなくちゃいけないんだい? 今年の終わりまでに何とか払うよ」みたいなことを言っていたとか。
いや、今年の終わりじゃなくて、来年の終わりまでにずれ込んだりして。いやそもそも全部は払わないかもね。本当に、それがありうるのよ、今のロシアの司法機関は。

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てなわけでそんなところ。
「ここまで長々と書いといて何言ってんだ」と思うかもしれないけど、あんまりワクワクしないねー。
一つには、プーチンのやり方には、ほとほとウンザリしてる。どうしようもないよ。こんなふうに、独裁者みたいに好き勝手するなんて認められない。
一方で、そうは言っても、ホドルコフスキーにもあんまり肩入れする気にもなれない。オリガルヒにはすごく興味を惹かれるし、大好きだし、研究対象として面白いと思うけど、同情するかって聞かれたら、同情なんかできないさ。
ものすごいことをやってきたんだからね。

追記
ホドルコフスキーの裁判中の写真ってのは、GettyImagesで検索すれば出てくるけど、元気そうだよ。
あれだけの修羅場をくぐり抜けてきた人だもん、このぐらい全然平気。全然平気。

Friday, December 17, 2004

競売-タイムリミットまであと2日

ユガンスクネフチガスのオークションが明後日に迫っている。
ここ数日の動きとしては、ユコスがアメリカのヒューストンの裁判所に破産申請をして、それが認められて、「ユガンスクネフチガスの競売を数日間延期するように」という命令が出されたとか。
それを受けて、ロシアの連邦資産基金(たぶんこの名称は間違っている。Federal Property Fundを単に訳しただけなんだけど、とにかくオークションの主催者側)は、「そんな命令関係ないね!」という感じで、予定通り日曜日にオークションをやるらしい。

なーんでここでヒューストンが出てくるわけよ、と。まぁ、誰か協力者がいたんだろうね。変なエピソードだけど、あんまり興味を引き立てられない。

どうやらオークションはなされるらしいし、この動きは止めようもない。ユコスさん、もう諦めましょ…、な~んてね。

でも、本当にユガンスクネフチガスが売られることは諦めなくちゃいけないような気がする。これは、プーチンが本腰を入れてホドルコフスキーを潰す方向に動き始めてから十分予測できていたことだ。
私たちは…、(って、私たちって誰?という気もするが、それはさておき)、私たちは、タイタニック号に乗っているの。氷山が前に見えてるんだけど、あの古びた設計の、コントロールの悪い舵じゃ、今さらどんなに頑張っても回避なんか出来ないよ。

でしょ? 私自身はこの競売じゃなくて、少し別のことを考え始めてる。一体なぜホドルコフスキーが選ばれたのかという最初の疑問と、アレクペロフとプーチンの関係について。
とりあえずはアブラモビッチの本を読み終わらせなきゃいけないんだけど。

Thursday, December 16, 2004

書評:"Putin's Russia"

書評ってのも書かないとね。

全体として非常に情報量が豊富で、読む価値がある本だと思う。
(これは、"The Oligarchs"の書評でも書いたような文章だ)

ただ読者層を絞っている本ではあるね。

テーマは「プーチン政権下のロシアの司法制度」なの。

確かにチェチェン紛争とも深く関わりがある内容だし、そもそもアンナ・ポリトコフスカヤはチェチェンの取材で名前を挙げた人ではあるんだけど、この本ではチェチェン紛争自体に関してはほとんど取り上げてない。
前作、"A Small Corner of Hell"で、チェチェンの一般市民にどんな犠牲者が出ているかということに注目を当てた。今度の"Putin's Russia"では、プーチンの登場によって、ロシアの人がどんなに被害を受けているかということをに着目しているの。

チェチェンの人が登場するのは、主にブダノフの件でのみ。最後のほうでももう一度出てくるけど、彼らはモスクワ在住で、モスクワでどんな人種差別を受けているかという話。
ブダノフの件は、ロシアの裁判所がいかに腐敗しているかを示すための例だったね。

その後、エカテリンブルクのオリガルヒの話があった。彼、フェドゥレフがのしあがったのは、エカテリンブルクの司法制度を手中におさめていたからで、それにはプーチンも関わっていると。フェドゥレフのプロジェクトにプーチンがやってきたりもしてる。
最後に、モスクワの警察が、ノルド・オストの後、関係ないチェチェン人を逮捕しまくったり、モスクワの学校でチェチェン人排斥運動みたいなのがあったりすると。

つまり、押えておかなくてはいけないのは、この本はチェチェン紛争ではなくて、プーチン政権下のロシアの司法制度を描いたものだと。
あと、これはわざわざ書くまでもないかもしれないけど、アンナ・ポリトコフスカヤがプーチンに対して非常に批判的な立場をとっていることも、踏まえておかなくちゃいけないね。プーチンを礼賛するようなのが読みたかったら、この本は期待に添えないと思う。

この2点を考慮に入れて、それでも読みたいなと思ったら、きっと満足する情報が手に入ると思う。
ロシアの裁判の中で出てきた文面や、裁判長の発言などが記載されていて、腐敗の現状にぐいぐいと迫っていける。オリガルヒ研究と言う面から見ても有用な本だった。

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ちょこっと文句を言ってしまうと、文章はあまり優れたものではなかった。早く読めると書いたし、実際、楽に読める本だったのだけど、句読点の打ち方が雑だった。
あと、文章が変。例えば、AとBが争っているとして、この本では、「Aは~だった。Aは、~された。Aは~どうたら」と書いた後で、2ページぐらいしてから、いきなり「Bは~」と書いてあって、「え? Bって誰よ?」と思うことが2回あった。説明が分かりにくいことがときどきあった。

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ちなみにこの本は、イングリッシュ・ペンがサポートに回っているのだけど、彼らのサイトを見たら、アンナ・ポリトコフスカヤが本の宣伝にやってきたときのことが書かれてあった。
それによると、この本の翻訳権は既に8ヶ国に売れてるんだって。で、その中にロシア語は入っていないはず。
ポリトコフスカヤの前作の翻訳本『チェチェン やめられない戦争』はかなり話題になった本だったようだから、今回の本も翻訳されて、日本語で手に入る可能性は高いんじゃないかな。

I care... CSIのグリッソムっぽく

"Abramovich"を読み始めた。最初の謝辞の部分3ページと、プロローグの13ページを読み終わったところ。

ここまで読んで分かったのは、この本、何気に時間がかかりそうってこと。サッカー本ということで、楽に読めるかなーと思っていたのだけど、それは違ったみたい。
まず、単純に文体が難解。これは、"Putin's Russia"を読んだ後だからそう思うのかもしれない。
どのあたりが難しいか説明が難しいのだけど、英語を母語としている人が書いた文章に見られる複雑さと言えば分かっていただけるかな。一つの文章に、複数の主張が混ぜられているというか。翻訳本の場合は翻訳者が、意味を単純化してくれてる部分があると思うけど、そういうのがなくて読解が大変。でも、本当はこのレベルの文章を軽く読めるようになりたいな。
もう一点は、使われている語彙に関して。やはり翻訳書では、使われる語彙は制限されてた。時折、難しい言葉が出てくるけど、実はその言葉は決まった意味で何度も用いられるだけだから、最初に辞書を引いて意味を覚えてしまえば大丈夫。ところが、"Abramovich"は、知らない単語ががんがんに用いられていて、分からない単語がいっぱい! これも、英語を母語とするジャーナリストが書いたせいだね。

とにかく、思ったより読むのに時間がかかるわ。1時間で20ページぐらいじゃないかな。"Putin's Russia"のほうは、25から、最高で30まで読めたから、だいぶ遅くなる。全部で312ページだというのは前にも書いたけど、今年中に読み終わりたいね。

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ついでに、13ページまで読んだ感想は、「何気に期待できるかも!」ということ。
例えば11ページには、ミッジリーとハッチンズがクレムリンの報道官に対して『2000年、シブネフチの所有権をアブラモビッチに移すために、ベレゾフスキーに対し、プーチンが“アブラモビッチに売らないならシブネフチを潰してやるぞ!”と脅したというのは本当かな?』という質問をファックスしたことが書いてあった。素晴らしい。そんな噂聞いたこともなかったよ。
あと、2000年にプーチンの最初の政権が誕生したとき、閣僚を誰にするかという面接にアブラモビッチは立ち会っていたんだってさ。

この情報と、"Putin's Russia"に書かれていたエピソードをつなげると、アブラモビッチは首相のカシアノフの留任を主張したりしたのかな? プーチンの第一政権のうち、カシアノフは特に元エリツィン派だったのだから。そして、2004年にフラドコフに挿げ替えられたんだよね。
このあたりはプロローグ以後のところでもっと詳しく書かれるかもしれない。

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もう一点。
8ページには、「チェルシーのファンはアブラモビッチの過去を知ろうとしない」と書いてあった。
確かにそうかもね。アブラモビッチがやってきた当初は、「こいつは誰じゃ?」みたいなことが言われたけど、その後、多くの有名な選手が獲得され、チームが結果を出すと、アブラモビッチのことをとやかく言う人は少なくなった。
著者はこういうふうに書いている。『多くの人の想いはこうだ。“全てがうまく行っているというのに、どうして昔のことをほじくり返すのか? 株の引換券だの、民営化だの、証券の希薄化だのといった過去を、誰が気にするか?』

ここを読んで私が思ったのは、“I care.”と。
これは、CSIの第一シーズンの最初のほうのエピソードでグリッソムが言った言葉。かっこ良かったねー。
確か捜査中に犯人が自供し始めて、彼の自白と既に突き止められた証拠とが矛盾してたんだけど、『事件はそれで終わり。証拠なんて誰が気にする?』という感じになったところで、一言“I care.(私は気にする)”と言ったのよ。
アブラモビッチに関して、私はこのグリッソムみたいな感じで、気になるのよ。彼の過去が気になる。どうしても気になる。莫大な資産を継いだのならいいのだけど、そうじゃないから気にしてしまうわけ。

にしても、あのときのウィリアム・ペーターセンの演技は非常に良かった。CSIの中で、ウィリアム・ペーターセンは、もう最高に輝いているね。

Wednesday, December 15, 2004

読破"Putin's Russia"

"Putin's Russia"を読み終わった。

本当は昨日のうちに読みたかったのだけど、結局昨日は1ページも読まなかった。
前に書いた写真サイトの作り方の説明が全然出来上がってなくて、行きの電車の中で原稿を書き、学校に着いてから、別の授業中に借りたノートパソコンに入力してた。それでも終わらなくて、帰り道でもやったわけ。
なんだかよく分かんないけど、一つのグループとしてサイトを作るのに、全ての作業を私が一人でやるなんておかしくないかい? などと思う。この話に関しては、"Putin's Russia"の最終章に絡めてまた後で。

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今回はまだ本全体の書評には取り掛からない。
今日読んだ202ページから283ページまでについて。81ページも読んじゃった! 行きの電車で15ページ。
学校でちょこっと読んで、帰りの電車で259ページまで読んだ。残りは24ページだったので、家で1時間ちょっとかけて読んだ。

おとといから、5章目のMore Stories from the Provincesに入っていた。
ここでは、カムチャッカの軍港で潜水艦の任務に関わっている人がどれだけ貧しい生活を送っているかが書かれていた。
軍港はリバチェという街にあるのだけど、その街はポリトコフスカヤが取材に行ったときは、石油危機に陥っていて、軍人は仕事場まで歩いて出勤してたとか。船長のディキーという人は、毎朝40分かけて歩いていくんだとか。お給料も少なくて、時々親から食べ物を送ってもらって、それを仕事仲間で分けてるとか。
すっごく悲惨な状況なの。軍隊というのが全然お金がないなんてびっくり。いや、そもそもこのディキーという人が船長をしている船は、原子力潜水艦なんだよ。「こんな状態じゃ、原子力潜水艦を維持できない」と彼は言ったりしていた。
なんとも言えない状況だね。大国だと言われているけど、実際には軍隊にうまくお金を回せてないロシア軍。
末恐ろしい。

その後は、46ページに渡って、ノルド・オストの件が書かれていた。ポリトコフスカヤも交渉役として関わった事件。
ノルド・オストの事件に関してはインターネット上で、ポリトコフスカヤのレポートを何度か読んだことがある。彼女は、この件で自分がどういうことを見聞きしたか、本という形でまとまった分量は載せてないみたいだね。
前作の"A Small Corner of Hell"にもなかったし、この"Putin's Russia"にもないから。

ここでは、ノルド・オストの被害者がどんなふうに扱われたかが書かれていた。
例えば、ファデーフ一族の話など。彼らは4人でノルド・オストを観劇している間に事件が起きた。そして、その一人、ヤロスラフ・フェデーフが命を落とした。彼は頭を銃の弾が貫通して、それで死んだのだけど、その(頭に残った)銃口から分析すると、撃ったのはピストルではなく、もっと大きなものだったらしい。ノルド・オストの犯行を行ったチェチェンのグループはピストルしか持っていなかったから、ヤロスラフはチェチェンのグループに殺されたんじゃなくて、劇場に突入したFSBによって殺されたと考えられるわけ。
政府の発表では、銃で死んだのは4人だけで、いずれもチェチェン側が殺したとしていて、FSBがヤロスラフを殺したことを否定している…。だけならまだしも、ロシア政府は、彼の死体は重要な証拠になってしまうから隠そうとしたり、犠牲者を病院に隔離しようとしたり、といろいろなことをやっていた。
この事件で忘れちゃいけないのは、劇場占拠を行ったのは、チェチェン側だろうけど、実際に大勢の命を奪ったのは、FSBが流したガスなんだよね。武装派によって人々が殺されたんじゃなく、FSBによって殺された。それも猛毒のガスが使われて。
この事件に関しては、「チェチェンが行ったことで、大勢の犠牲者が出た」みたいな取り上げられ方が今や普通で、ともすると、「そんなんだったかな」と思ってしまうかもしれないけど、実際には、犠牲者の死についてはFSBの責任は大きいよね。
そういうことで、被害者たちが国を訴えようとしたのだけど、裁判システムが腐っているロシアでは、そういう訴えは却下されてしまう…、という話が続く。
あと、ノルド・オストのあと、モスクワで、何にも関係ない普通のチェチェン人に一体どれだけの冷たい眼差しが投げかけられたか、とか。
例えば、銀行に勤めていたアブバカール・バクリエフの話。事件は10月23日に起きたのだけど、その後で上司に呼ばれてこう言われた。『悪く思わないんで欲しいんだけど、君のせいで会社が面倒なことになりそうなんだ。自主的に辞表を書いてくれないかな。日付は遡って、10月16日で』と。
日付を遡らせるのは、ノルド・オストのせいで首にしたわけじゃないとするため。事件の全く関係のない人々が、チェチェン人というだけで集団的に責任を負わされている。ついでに、隣国ダゲスタンの人も…。
(もしや、ダゲスタンとチェチェンの区別がついてない?)

その後に最終章のAkaky Akakievich Putin IIが続く。アカキ・アカキエビッチというのは、ゴーゴリの小説に出てくる虐げられた英雄の話。プーチンと似てるんだとか。

面白いのはここでポリトコフスカヤは、『なぜ自分はプーチンがこんなにも嫌いなんだろう? 彼に関する本を書いてしまうほどに』と自問している。
そして、その理由をつらつらと挙げているわけ。最終的に、“プーチンは~だから、嫌い”という形で終わるんだけどね。

途中で私の心が惹かれたのは、276ページ。『プーチンは、これまでに何度も、ディスカッションの意味を理解できていないことを露呈してきた。彼にとっては、下の者から言葉が返ってきてはいけないのだ。』
「というのも、彼はKGBという組織にいたから」とポリトコフスカヤは分析する。プーチンが生まれながらに、こういう気性だったというのではなく、KGBという組織にいたおかげでこういう考え方をするようになったと。
ポリトコフスカヤに言わせると、『KGBというのは、上に立ったものが絶対で、上からの命令には必ず従わなくてはいけない』。でもこれは逆に、『自分が上になったら、下のものは自分に絶対に従わなくてはいけない』ということなんだ。
そういう組織の中で、下のものが、質問をしたり、言葉を返したりすることは許されなかった。プーチンはそういうメンタリティをはぐくんだままトップに上がったのだと、ポリトコフスカヤは書いている。

これを読んでどきりとしたのは、自分のこと。これは少し本の内容からずれるけど、私、質問するのが本当に下手なの。大学の授業の最後とかで、「質問はありますかー?」などと講師が言って、ときどきとても鋭い質問をする人がいるけど、私はといえば、質問のしの字も思い浮かばないぐらい。頭が機能を停止しているというか、なにをどう質問すればいいかも分からない。そして、そういう自分が、あんまり好きじゃないの。
アンナ・ポリトコフスカヤに憧れるし、鋭い質問を投げかけたいと思っているのだけど、実際にはな~んにも思い浮かばない。これには、結構な無力感を感じるね。調査報道に惹かれるのに、自分は調査報道をするだけの能力がないと気付かされるもんだから。一番興味を惹かれる物事に手が届かない。
そして、考えてみれば、それって仕方のないことなのかなと思う。だって、これまで私の人生の本当に多く部分が受験勉強に費やされてきた。受験勉強においては、自分で何かを考えるのではなく、与えられた情報をどんどん覚えていくだけだよね。『教師が話してくれることは絶対で、あんたはただそれを覚えればいいだけ』。こういう思考を10年ぐらい続けてきたおかげで、質問するということが出来なくなってしまった。
これじゃ、プーチンと同じだわ。非常にさびしく感じた。人間の行動特性というのは、変わらないものではないけど、一度固定されてしまうと変化させるのは難しい。私、ダメ人間の道を歩いてる…と思った。
この辺りは、私が一番苦手な分野。直視するのは苦難だよ。そんなわけで、冒頭の「私が一人で全部の仕事を抱え込んでる」という状況なんだけど、もっと周りに助けてもらえるような人間になれたら良かったなーと思う。でも、どうしようもないよね。

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そんなわけで、"Putin's Russia"は読み終わった。読み始めたのは、11月24日からだから、3週間かかってしまったね。意外と長い。これは不思議だわ…。
実際に本を開いた日は、11/24、12/6、7、8、13、15の6日間だけなのに。家でももっとちゃんと読まないとダメだね。

Monday, December 13, 2004

マフィアの街、エカテリンブルグ

今日は"Putin's Russia"を202ページまで読んだ。前回、といっても5日間も前だけど、100ページの壁を超えたばかりで、次の日には200ページ目を超えるなんてかなりのハイペースだよね。

この本面白いし、読みやすい。使われている言葉もどちらかというと簡単だし。
1時間でだいたい25ページぐらい読める。"The Oligarchs"は1時間で22~23ページで、"Violent Entrepreneurs"は17~19ページだった。最近読んだ本の中で読みやすい部類に入るね。

本編は283ページまでだから、明日頑張れば読み終わるかも。残りが20ページぐらいなら家で読んでもいいし。なるべく早く"Abramovich"に入りたい。だって、"Abramovich"と"Godfather of the Kremlin"を来年の5月までに読み終わらないなんて事態はどうしても避けなきゃ。せっかくハードカバー買ったんだから。
(とはいっても、学校の往復でしか読まないという方向で話を進めている私、かなり怠惰だね。家でも読めばいいのかもしれないけど、つい別のことをしたくなっちゃうのよ…)

"Putin's Russia"の145ページから193ページまでは、How to Misappropriate Property with the Connivance of the Governmentという章で、ここでは主にエカテリンブルグのフェドゥレフという人間に関して綴られていた。
実は、エカテリンブルグというのは、フェドゥレフの街といってもいいぐらいなんだって!
エカテリンブルグっていうのは、モスクワ、サンクト・ペテルブルク、ノボシビルスク、ニジニノブゴロドにつぐロシア第5の都市(少なくとも人口は。約130万)なのに、たった一人の人間(というかマフィア)によって支配されているんかい…。ちょっと驚きだ。

このフェドゥレフという人間は、オリガルヒだよ。やってることが、まさにオリガルヒ。ホドルコフスキーやベレゾフスキーと変わんない。本当に無慈悲だ。アンナ・ポリトコフスカヤは本の中で、彼が犯してきたいろいろな犯罪を詳細に記録している。

それを読んで、「そうよ、これよ。この視点よ。この書き方よ。デイビッド・ホフマンも、このぐらいのこと書いて欲しかったなー」と思った。フェドゥレフというマイナーな存在に関して、ここまでのことが記述できるなら、ホドルコフスキーとか、グシンスキーについても、もっともっと書けたはず。惜しい。
(どうでもいいけど、"Abramovich"にはこんなこと書いてないんだろうね。アブラモビッチの周りで誰が銃殺され、どんな事件が未解決のまま調査もされずに放置されているか…。是非是非知りたいのだけど)
けれどその後で読むことになっている、クレブニコフの"Godfather of the Kremlin"には、ベレゾフスキーが隠したい事柄がたくさん書かれているとのこと。ということは、"Putin's Russia"→"Abramovich"→"Godfather of the Kremlin"と読んでいくと、バランスが取れるのかな、と思う。「オリガルヒ批判→オリガルヒ絶賛→オリガルヒ批判」みたいな順序になるから。

それにしても、前回の投稿でリンクを張ったガーディアンの"He won, Russia lost"っていうのは、本当に秀逸な記事だね。短い文章の中で本当にたくさんの情報が載せられていた。あの文章を先に読んでいたから、今いろいろな本を読んで、膨大な情報が頭に入ってきても、うまく解釈していけるような気がする。無料で読める記事だし、最高だった。

にしても、エカテリンブルグ! すごいわ。裁判所が完全に腐敗している。裁判官が任命制なんだけど、おかげでトップの人間の言うことを聞く人しか重用されない。もし、仮に言うことを聞かない人が来た場合、鉄パイプでボコボコにされるとかって事態が起こったりして…。ありえない。エカテリンブルグはマフィアの街だよ。やばすぎる。

ウラル地方には、ウラルマシュという、それはそれは有名なマフィアがいて、彼らの名前は"Violent Entrepreneurs"の中にも出てきたんだけど、まぁ、とにかく強力なマフィア・グループなわけ。そんな彼らが活動の場としていた都市として、エカテリンブルグがあるんだね。
それで注目は、このウラルマシュというグループを向こうに張って、いかにフェドゥレフがエカテリンブルグという街を牛耳るようになったかという話。そう、フェドゥレフというのは、最強のマフィアをぶっ潰せるぐらいの奴なんだ。

後に残された死体は…、フェドゥレフの仕事仲間のアンドレー・ヤクシェフ(1995)。同じく仕事仲間でエカテリンブルグのオリガルヒだったアンドレー・ソスニン(1996)。元々彼の部下で後に裏切ったユーリー・アイシュル(1999)。
3人とも銃で撃たれて死んだそうで、ポリトコフスカヤは背後にフェドゥレフがいると見ている。
フェドゥレフってのは、気に入らなくなると仕事仲間を殺してしまうという評判があるみたいね。あー、怖い。あー、怖い。でも、実際のところ、アレクペロフもね、仕事仲間を殺すという評判があったりする。殺人は、オリガルヒの証。

ポリトコフスカヤが154ページにこう書いている。
『人を殺すと、尊敬されるようになる。それが最近のロシア』、とのこと。そんなのダメだよ…。

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てなわけで、"Putin's Russia"は、オリガルヒ研究という面から見ても、読む価値がある本だね。オリガルヒというのは、現在のロシアの様々な領域に影響力を持っているわけで、どんな切り口でロシアを見ても必ず出てくる存在なのかも。
一方で、実は巻末のポストスクリプトのところを読んだ後、「ポリトコフスカヤはプーチンを批判するためには、オリガルヒの肩を持つこともいとわないのかな?」という心配があったのだけど、この疑問に関してはこの章で完全に否定された。

ポストスクリプトでポリトコフスカヤは、ホドルコフスキーのことはあまり批判せず、プーチンの対応を中心に批判してた。普通の人々の側に立つという彼女のスタンスを考えたとき、ホドルコフスキーの悪事について無視するわけにはいかないはずなのに、どうしてホドルコフスキーの肩を持つような書き方になったんだろう、と不思議だったのだけど、本編でこれだけオリガルヒ批判をしてるなら、ポストスクリプトであのぐらい穏やかな表現に終始しても彼女の主張は明白だね。とにかく、すっごく強烈な章! 今まで読んできた中で、最も印象に残る章の一つ。

Thursday, December 09, 2004

ついに到着-"Abramovich"、"Godfather of the Kremlin"

本が到着! 心が躍ってしまう。同時に、本当に買うべきだったのだろうか?? と、悩み始める。だって、5000円もしたんだもん。数えてみると、今年、アマゾンだけで8冊の本を買い、8冊で1万6173円を支払った。
1万6000円だよ!! びーっくり!

まだ読み初めてはいないけど、ざっと見たところでは、"Abramovich"の嬉しいところは写真がたくさんカラーで掲載されてあったところかな。
写真の一つにはスタンフォード・ブリッジの客席でアブラモビッチがガッツ・ポーズをして、シビドラーが両手を宙にあげて、その他周りにシブネフチの関係者が陣取って、皆が喚起に包まれているって写真があるのだけど、これはガーディアンの"He won, Russia lost"の中で言及されていたものに間違いないね。
この写真は是非見たいと思っていたのだけど、どこにも見つからなかった(探し方が悪かったんだと思うけど)。ようやく、本"Abramovich"の中で見つけることができてありがたい。先の"He won, Russia lost"の中では、とても象徴的に使われている写真なのよ。

面白いのは、"Abramovich"の参考文献のところに、本が10冊挙げられていたのだけど、そのトップにクリスチャ・フリーランドの"Sale of the Century"が挙げられていた。やっぱりこの本、ロシアのオリガルヒ研究においては、最重要本なんだね。何でこんなに重要な本が品切れで、どこにもないのよ??
ついでに2番目に挙げられていたのは、デイビッド・ホフマンの"The Oligarchs"。私が10月から11月にかけて読んでたやつ。

この本には注が一切ないみたい。ちょこちょこと他の本の引用はしてるようだけど、注釈というのものは存在してない。
そうではなくて、自分たちが取材した情報のみを載せてるわけ。例えばアブラモビッチが子供の頃を過ごした学校とかに行って、そこの教師と記念撮影したりしてる。アブラモビッチがティーンエイジャーのころ、ガールフレンドと一緒に写った写真なんかもある。
なかなか面白そうだ。こういう本もいいよね、時には。

そうだ、書き忘れるところだったけど、この本、デカイ! デカイなんてもんじゃない。縦が24cm、横が16cm…。アマゾンの箱を開けたときは、なんだこの大きさは? と驚いてしまった。ハードカバーの本としては、今まで持っている本の中で最大の大きさ。日本の普通のハードカバーの本を横において比べると、3/4ぐらいの大きさで、なんかそもそもの規格が違うって感じ。
何でこんなに大きいんだろう。大きい本って重たいから読むのが大変だわ。特に学校まで2時間以上ある私。持ち運びが大変なのは嫌よ。
一方で、本が大きいということは表紙の写真も大きい…、アブラモビッチの写真も16cm×18cmぐらいの大きさになっている。そのせいで、彼の目がほんの少し緑がかったきれいなブルーであることに気がついた。かわいい色の目だね。…。な~んて書くと、ストーカー気味て来ちゃう。でも、まぁ、ストーカーなんだけど。
この本はストーカー向きだよー。子供の名前とかきれいに書いてある。ソーニャとアルカーディとアリーナとアナ。スパイス・ガールズのメンバーを覚えるみたいに、暗唱できないとダメかな? そうそう、奥さんの名前がイリーナなのもおさらいしとかなきゃ。アルカーディってのは、彼のお父さんの名前を取ったものだね。ロマン・アブラモビッチは、フルネームだと、ロマーン・アルカーディエビッチ・アブラモービッチとなる。ミドルネームが父親の名前から取られるっていうのは前に書いた通り。あの時、いろんな人のミドル・ネームを調べたりもしてた。

"Abramovich"の長さは、全部で337ページ。本文は312ページで、残りは参考文献とインデックスになっている。
"Putin's Russia"の後はこっちを読もっと。せっかく高いほうのハードカバーを買ったんだもんね。なるべく早く読まなくちゃ。


もう一冊の"Godfather of the Kremlin"のほうもデカかった。日本の本は小さいから比較の対象にはならないとしても、イギリス・アメリカのペーパー・バックよりも格段に大きいというのは解せない。
例えばピカド-ルから出てる"Bridget Jones's Diary"のペーパーバックが手元にあるので、大きさを測ってみると、縦17.6×横11cm。これはペーパーバックとしては標準の大きさ。フィクションだとこの大きさのペーパーバックがほとんど。
しかし、"Godfather of the Kremlin"は、縦22.1×横14.1cm。…。なんだこりゃぁー? 日本のハードカバーよりも大きいペーパーバック。ビビってしまう。

この本は学術書だ。全部で400ページのうち、後半の長い部分が参考文献と注に当てられ、本編は345ページまで。
アレクペロフのページだけ読み直してみた。やっぱり最高なのは194ページのところ。
アレクペロフはプレゼントを贈るのが大好きで、例えば20億円相当のジェット機をルシコフにあげたことが書かれた直後に、「タダで?」という疑問文があり、その次の文章にこうある。
『"タダのものなんてさ"と、アレクペロフはクスクス笑いながら言った。"だけど、支払いの方法はいろいろあるね。"』

なんとなくしっくりこない訳文だけど、こんな感じ。
とにかく、アレクペロフにノック・アウトされてしまうのはこのあたりだな。すてきんぐ…☆ 将軍で、ドンで、あらゆる民主主義運動を弾圧する…。

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そんなわけで、ようやく本が届いた。読み始めるのが楽しみ。

韻を踏んでる"Abramovich"の副題

昨日の夜、お風呂に入りながら、はたと気付いたのだけど、"Abramovich"の副題の'The Billionaire from nowhere'っていうのは、韻を踏んでたね。いままで全然気がつかなかった。

この'The Billionaire from nowhere'という副題は、私、すっごく気に入っていて、でも、どうして気に入っているのか分からなかった。それで、何回か口にしてみたんだけど、ようやく韻を認識したというわけ。

ビリオネアーの「(ネ)ェアー」の部分と、ノーウェアーの「(ウ)ェアー」の部分が共通してる!
そのおかげで、まるで音楽みたいな響きになっている♪ 秀逸!

ビリオネアーのnと、ノーウェアーのnの配置も、意図したものではないと思うけど、とてもいい場所にある。統一感が出てるね。

韻に気づいていしまったら、前々回に私が書いた"Alekperov: The Billionaire with Bribes"に、どうも違和感がある理由もわかった。こっちは韻が踏めてないの。
韻を踏みたいなー。"Alekperov: The Greedy Journey Fixed with Money"とかかなー。今、必死に考えたけど、どうも音楽みたいな響きにならないや。

にしても、最近読んでるのは学術書が多いらしくて、どれも副題がついてるね。
こんなに副題がついてる本を読んだことはなかったよ。
(つまり、今までおちゃらけた本ばかり読んできたってことか)

"A Small Corner of Hell: Dispatches from Chechnya"
"Violent Entrepreneurs: The Use of Force in the Making of Russian Capitalism"
"The Oligarchs: Wealth and Power in the New Russia"
"Godfather of the Kremlin: Boris Berezovsky and the Looting of Russia"

副題がないのは、"Putin's Russia"ぐらいだわ。

Wednesday, December 08, 2004

半分突破"Putin's Russia"

"Putin's Russia"、今日は順調に飛ばした。行きの西武線でこそ窓から景色を眺めただけで終わったけど、小田急線に乗ってからはがんがんに読みふけり、授業中の暇な時にも読み、帰りの電車では最初から最後まで読みまくった。

そんなわけで、現在146ページまで読んだところ。前日比+63頁♪ やったね。

書かれていた内容は、まず昨日話題に上げたブダノフの件。
この件の終わりのほうでは、クレムリンが当初の方針とは180度変わって、ブダノフをかくまったりせずに、有罪の判決が与えられるようにしたらしい。
2002年の大晦日に出された初審の判決では、レイプの事実は認められず(レイプは起こっていない!)、殺人についても錯乱によるものとし、無罪になった。
しかし、その後、最高裁のミリタリー・カレッジ(←これ、なんて訳せばいいのか分からない。'Military College of the Supreme Court'と書いてあったのだけど)が、翌年3月始めにこの判決を無効にし、裁判がやり直されることになった。
すごいね。一度出した判決を取り消してまで、ブダノフを有罪にしようとは…。その数ヶ月前までは、ブダノフをなんかして無罪にしようとしてたのに。でも、まぁ、いいことだ。
この件に関してはドイツの連邦議会がプーチンに手紙が出したり、サミットで会ったときにシュレーダー首相が直々にプーチンにどうなっているのか尋ねたということが書かれてあった。ドイツすごいじゃん!


その後、111ページからは第3章のTanya, Misha, Lena, and Rinat: Where are they now?という章。
これは、ターニャ、ミーシャ、レナ、リナットというアンナ・ポリトコフスカヤが個人的に知っている4人の人間に注目して、その生い立ちとロシアにおける現在の立場を記したもの。

ターニャの話が最高に面白くて、彼女はポリトコフスカヤの知人で、昔ポリトコフスカヤと同じアパートに住んでいた人で、当時は夫とその家族との仲が良くなくて、不幸せな日々を送っていた。けれど、1990年代の初めからモスクワの市場で事業を始めるようになって、今では、スーパーマーケットを何店舗も所有し、市議会議員に立候補して当選したとのこと。
彼女は、バディム・ボルコフの"Violent Entrepreneurs"に出てきてもおかしくないぐらいで、もろに活動領域はかぶっている。といっても、犯罪者グループの人ではなく、犯罪者グループに賄賂を渡す側だけど。1990年代前半にうまく立ち回ったおかげで、お金を稼いだ人たちの一人だ。

面白いのは、立候補したときの演説で、最後のほうにプーチンを絶賛したの。その会見場にはポリトコフスカヤも来ていて、「なんであんなことを言うの?」と尋ねたら、ターニャは「言わなきゃいけないの。それが最近の決まり。もし言わなかったら、次の日、FSBの人間がお店にやって来て文句を言ってくるわ。皆が言っていることを言わないことに対して。今の時代、ビジネス・マンはそういう状況に置かれているのよ。」
「もし来たらどうするの?」
「別に何も。賄賂を要求してくるわ。」
「何に対して?」
「言わなかったという事実を、忘れるために」
このやり取りが、126ページに書いてあった。
すごいね。ロシアの役人ってのは、本当に腐敗してるんだ。"Violent Entrepreneurs"は主に1990年代半ばの話だったけど、大統領がプーチンに変わってからも腐敗がなくなるわけではない…、と。当たり前といえば当たり前だけど、その点が確認できたのはありがたい。

私の坪にはまったというか、大笑いしてしまったのは、その次のページに書いてあったこと。
「最近彼女は電話してきて、彼女の記事を書いてと頼んできた。私は書いた。あなたが読んでるこの文章がそれ。彼女は、記事が出版される前に読みたいといい、読むと恐れ戦いた。彼女が死ぬ前にロシアでこの記事を出さないことを約束させられた。
『海外はどう?』
『どうぞ。外の人たちに、私たちのお金がどんな類のものか知らせなさいよ』
だから、今、あなたに知らせたところ。」

すばらしい。どことなく皮肉が混じっているところがいいね。
ついでに、この記事、一体どういう経緯で出版されることになったのか、途中ですごく疑問になったのだけど、それが解決されたのも良かった。だって、プーチンのFSBが賄賂を要求してくるなんて、書いたらダメなことでしょ。特にこのターニャはポリトコフスカヤの友人で、今モスクワの議員なんだから、大問題になっちゃう。
一方で、アンナ・ポリトコフスカヤに記事を書いてもらうよう頼むなんてターニャは何を考えていたのか。ポリトコフスカヤは、プロ意識がすごい強いね。生半可な記事は絶対に書かない。例え自らの知人に関するテーマでも、いつも通り、何の隠し事もせず、全てを暴いていく。これはすごいことだ。

その後はミーシャとレナの元夫婦の話。この話はこたえたよー。ミーシャは、アルコール中毒になり、殺人を犯し、刑務所に行ったりするのだけど、127ページから136ページまで10ページ分読んで、ミーシャのことをいろいろ知って、親近感も持てたところで、『ミーシャは地下鉄に飛び込んで自殺した。私たちがこの話を知ったのは、ずいぶん後になってからだ。』『彼はホームレスとして埋葬された。いや、正確にいえば、埋葬されたのは灰だけだ。というのも、こういう死に方をした場合、遺体は火葬されるから。彼の墓がどこにあるのか、知っている人は誰もいない』
という一文で話が終わった。

これを読んだときは「え?」と思ってしまい、数分間、その後を読み進めることができなかった。
なにそれ? 彼がどこの大学に行き、どこに就職したかという話を知った数十分後に、お墓もどこにあるか分からないなんてビビってしまう。
こういう展開の話が一番慣れない。例えば、ブダノフの件なら、犠牲者のエルザは最初から殺された人として登場するので心の用意ができている。
彼女の死は、ものすごい酷いものだけど、最初から酷いものだと分かってて読んでいて、しかも、この手の事件を私が既に知りすぎているせいであまり衝撃を感じることはない。どちらかというと冷静に事実を追いたい。
一方で、ミーシャの方はまさか死ぬとは思ってなくて、それが10ページを読んだ最後の6行で、恐ろしい記述があってショックを受けた。
だって、お墓もないなんて! 地下鉄に飛び込むなんて…。

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半分読んだところで思うのは、この本はとてもよく書けていると。ターニャのエピソードは本当に面白かった。
同時に、ブダノフの件を読んで確信したのは、この本の魅力の一つとして、権力を持った側の行動に対する怒りが、込み上げてくることが挙げられると思う。

どういうことかというと、例えばブダノフの件では、裁判長が裁判でどのような見解を述べたか、エルザ側の遺族の弁護人がどのような参考人を呼ぼうとしたのに対し、どう却下されたかということが書かれていた。

今まで、チェチェンに関しては、チェチェンの市民に関する話は読んでいたのだけど、裁判の詳しい展開についは丸っきり知らなかった。それで、60ページ分の内容を読むと、弁護人が目撃者を招集しようとしても却下されたり、2度の精神鑑定で責任能力があるとされているのに、それらが破棄され、3度目の別の精神鑑定が行われ、そこで「責任能力なし」という結論が導かれていたりと、不条理なことがいっぱい!
戦争そのものだけでなく、その周辺でも、こんなに納得できないことがあるのかということは初めて知った。

今まで読んできたどの本とも違う類の情報が載せられている。読む価値がある本だと思う。

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追伸
アマゾンの二冊の本が発送されたとのこと。明日には届くはず。

忙しい日々

"Putin's Russia"を昨日は83ページまで読んだ。行きの電車の中と、授業中にちょこっと。

46ページからずっとブダノフの事件が書かれている。チェチェンの女性をレイプして殺した彼。彼のことは、"A small corner of hell"でもちょこっと触れられていたよね。裁判で、彼は有罪になるのだけど、83ページはその裁判の途中で、3度目の精神鑑定の結果が書かれているところ。この話は106ページまで続く予定。
全部で291ページの本のうち、60ページがここに費やされているわけだ。非常に重要なものだね。この件について何かを書くのは、一応106ページまで読み終えてからにしよっと。

一昨日の終わりの時点と比べて40ページ進んだのだけど、もっと行きたかったなー。
実は一昨日話題に出した写真サイトの試作品が、そのまま通って、それで行くことになった。だから、帰り道には「何をどうしようかなー」なんて考えていたので、本を開かなかったの。

試作品がそのままでOKだったのは、良かった良かった。あれだけ頑張ってさらに何かをしなくちゃいけなかったら、泣いちゃうね。ただ、試作品ということで自分勝手に作ったものが、全て既成事実化してしまったことには、「これでいいんだろうか?」と思わないでもない。
サイトの名前なんかも、独断と思いつきでつけっちゃったし…。いや、でもいい名前だよ。思いつきというより、ひらめきだね。

てなわけで、また忙しい日々が続く予定なので、本は読めないかも。来週までに、他のメンバーが関われるように、ファイルの作り方をまとめなくちゃいけないの。
その前に、試作品を大々的に公開する前に書き足さなきゃいけない部分がいろいろあるし…。めげないようにね!

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ところでアマゾンだけど、先ほど見たら、"Abramovich"と"Godfather of the Kremlin"の両方が、「まもなく発送される商品」になっていた。今日か明日には到着するかもね。
代引手数料を合わせて4982円! たっか~。でも、"Abramovich"、すっげー、楽しみ。
("Alekperov:The billionaire with bribes"とかって本も誰か書いてくれないかなー。アレクサンドル一世の話も知りたいよ。ていうか、このタイトルすごく良くない? 彼のことを的確に表現してると思うし、bの音をうまく使ってる!)

アレクの話もユコスの話も調べなきゃなんないし、"Putin's Russia"も読まなきゃなんないけど、とりあえず今は0時半から始まるシットコム"二人の男と一人の女"を見て寝ちゃお!

PS. あ、そうそう。本返しに行かなくちゃ。"アメリカナイゼーション"、明日までだから。インターネットで見ると、予約してる人が一人いるので早く返してあげなきゃいけないよね。
ついでに、"チェチェン 屈せざる人々"も、まだ借りてたりする。貸し出しの延長がインターネット上で可能なんだけど、やってみたら1月5日までになった。借りたの11月10日だから、2ヶ月ぐらい返さなくていいのか…。11月の終わりの館内整理と、年末年始の休日が重なったおかげだけど、末恐ろしい。

Monday, December 06, 2004

"Putin's Russia"、読み始め

わお、2週間近く更新してない…。でも、いいよね、別に。だって書くことなかったんだから。

いや、ユコスの件など書くべきことはいっぱいあった…。けれど、全然情報を追ってないので、書けないのよ。オークションまでは、あと2週間。まさか延期になったりしてないよね? メナテップがどこかを訴えにかかったという話は聞いたし、その後の行方が心配だわ。あ、ガスプロムがユガンスクネフチガスの競売に参加する意向だという記事も読んだっけ。

全然更新しないわ、ニュースは追わないわ、で「やる気あんのか?」という当然の疑問が出そうだけど、決してのらくらサボっていたわけじゃない。
学校の研究室で写真サイトを作ろうという企画が前からあったのだけど、途中で企画自体が雲の中に消えそうになっていた。どういうわけか、全然話がまとまらないの。埒が明かないのが分かった先週の火曜日、「来週までに私が試作品を作ってきます」と言ってしまったが運の尽き。
コンセプトは単純だったのだけど、手作業の部分が多く、結局4日間ぐらいかかりっきりになってしまった。木曜日と金曜日と土曜日はそれぞれ8時間から10時間は作業したね。こんなに頑張ったのは生まれて初めてじゃないかってぐらい。そんなに頑張ることは求められていないのに、頑張っちゃう私って健気だなー、なんて思う。
途中で泣きそうになって、ぶちきれそうになったのだけど、最近の私のお気に入りの台詞 "That's life, sweetheart. That's life." を繰り返して、なんとか乗り切った。(日曜の夜に無事完成♪)
この台詞は、映画『シカゴ』でレネー・ゼルウェガーをたぶらかしたドミニク・ウェストが、殺される直前に言い放ったもの。とってもいい台詞だと思う。特に'sweetheart'の部分が。

どうでもいい話ついでに、今日は以前にも話題に出た書評レポートの提出期限だった。課題図書の"アメリカナイゼーション"は、暇を見つけて読み切っていたのだけど、慌しい1週間だったおかげで、レポート本文は手付かずになっていた。それも今朝の6時39分まで…。
昨日の夜、なんだか寝ちゃって、今朝の6時前に奇跡的に目が覚めたというわけ。そこからグダグダして50分ぐらい時間を潰してしまったのだけど、6時半を過ぎた頃、「こりゃ、本格的にやばい!」と思い、ようやく取り掛かった。
8時半ぐらいまでの2時間で、書いたよ。本文4832字。指定の文字数は2000~5000字だったから、上限すれすれだね。2500字ぐらいでお茶を濁そうかと思っていたのに、書き始めたら止まらなくなっちゃって、結局5300字ぐらい書いたのを削ることに。
こういうの茨の道を進むっていうんだと思う。背負わなくてもいい苦労を背負っていく。ホントに健気な私。

ただ、"アメリカナイゼーション"の本自体はなかなかに面白かったから、中途半端なレポートは書けないって思ったのだ。(…。これが、提出日の朝まで取り掛からない人間の言うことかってのはさておき…)

私の場合は、巷の英語信仰を逆手にとって、ハゲタカみたいに生きてきた面もあるので、必然的にこの問題には関心を引かれるなー。面白いことに、学生の間って英語ができると馬鹿扱いされないの。(本当は馬鹿なのに)
中学校、高校の間、英語以外の科目は悲惨な出来だったけど、英語だけは大得意だったおかげで、肩身の狭い思いをせずに済んだ。ラッキー。
でも、英語が使えても、接することのできる情報がちょこっと増えるだけで、たいした利点はないよねー。そりゃ、英語の本が読めて、邦訳されてない"The Oligarchs"などの情報が手に入ったのは最高に嬉しいけど。英語崇拝とかに、もう少し感情的にならずに、距離を置いて接せられるようになりたい。

アメリカの支配に関しては、ナオミ・クラインの"ブランドなんか、いらない"も、最高に参考になるので、早めに買ってしまいたいのだけど、ずるずると先延ばしになっている。

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そんなこんなな日々だけど、ニュースとしては、今朝の6時3分にアマゾンからメールが来て、"Godfather of the Kremlin"の到着が遅れてるとのこと。1~2週間遅れるんだって。
それに続いて書かれていたのは、「他にも注文している商品がある場合は、入荷済みのものから、発送します」と。けれども、「発送回数が増えることによる、追加の配送料、手数料の請求はない」とのこと。

つまり、"Godfather of the Kremlin"の発送は遅れる。一方で、同時に頼んどいた"Abramovich"は入荷され次第、発送するってことだよね。

でも、問題は…、代引きなんだけどー。

クレジット・カードは持ってるけど、使う気になれないのでアマゾンではいつも代引きで頼んでる。
発送回数が増えるってことは、代引手数料も増えるってことだよね。発送1回なら198円。2回なら396円。
手数料は増えないと言ってるけど、これはアマゾン側の手数料ということ。'手数料'と'代引手数料'は別項目として扱われるものだから、今朝のメールの中で「手数料がうんぬんの話」は、代引手数料には当てはまらない。つまり、代引手数料については言及されていない。

まず確実にありえないシナリオは、向こうが勝手に発送時期を遅らせといて、発送回数を増やして、こちらが代引き手数料を2度払うってこと。これは詐欺かなんかにあたると思う。

一方で、発送を2回に分けて、2回目の代引きにかかる手数料をアマゾン側が負担するっていうのも、ありえない話。アマゾンって、なにげにケチな会社だからね。

ってことは、発送が2回に分けられるってことはありえないはず。つまり、"Godfather of the Kremlin"の到着を待ってから、"Abramovich"と一緒にして一度に発送することになるはず。
絶対まとめて発送すると思うんだけど、だったら、今朝のメールで「他にも注文している商品がある場合は、入荷済みのものから、発送します」なんて書くんじゃねーよ! と、ぶちきれそうになる。

代引きで頼んどいた場合で、商品の確保が遅れた場合はどうなるか、どこにも書いてない。問い合わせてもいいんだけど、この場合、放置しておくと、どんなことになるのか興味があるので、様子を見てみよう。

ちなみに、ウェブサイトのアカウント・サービスのページを見てみると、注文商品の欄が上下に分けられていて、
上のほうには「発送予定日: 12/ 4 - 12/ 5 Abramovich」、
下のほうには「発送予定日: 12/13 - 12/20 Godfather of~」と書かれている。
めずらしいレイアウトに、心が躍りそう。

でも、「12/4~12/5って、とっくに過ぎてんじゃねーのかよ!!」 なんてね。
「この注文には、未発送の商品が2点あります。配送予定: 12/ 5 - 12/23」というかわいい一文も、こっそりと。

でもこのぐらいでノタノタする私じゃーない。実は、9月17日にAmazonのほうで、"Miss Melville Runs for Cover"という本を頼んだのだけど、3週間したら、「まだ手に入りませんので、注文の延長の手続きをしてください」というメールが来て、さらに3週間したら同じメールがきて、もう一度延長の手続きをする気になれなかったら、結局11月の中旬に注文がキャンセルされたことがある。
それに比べたら、こんなの序の口だわさ。

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ところで、今日の登下校の話。行きの電車では、メモ帳にタラタラ無意味なことを書くだけで終わってしまったのだけど、帰りの電車の中では、アンナ・ポリトコフスカヤの"Putin's Russia"を読んだ。

13ページから43ページまで読んだ。片道で30ページ読めた。いいね~。しかも、この本は辞書を全く引かなくても読める! ロシア語から英語への翻訳本だから、使われている語句が難しくない気がする。
往復で読んだら、一日60ページは読めるかも。全部で291ページだから、5往復でOKかな。

でも、書かれていた内容は、簡単とは程遠いもの。ロシアの兵士がいかに上官にいじめられるか、事細かに記述されていた。
例えば24ページでは、ユーリ・ディアチェンコという曹長の話が出てた。2002年の8月28日の夜から上官に打たれたりして、トイレのマットを顔につけられたり、3リットル分のお粥を無理やり食べさせられたり。次の日の朝6時、彼が倉庫で自ら首を吊って死んでいるのが見つかったとか。

あるいは、16ページから17ページにかかれているのは、2002年9月8日、プルドボイの訓練場で、上官が「FRLVという車を盗んだのは誰だ? 名乗り出よ。」と言いだしたときのこと。実際にはFRLVは盗まれてなくて、駐車場にあったそうで、これは単なる言いがかりなのだけど、下級兵士5人が上官のテントに呼び出され、立って歩けないほどの暴行を加えられたとか。

28ページからは、ハスハノフという人に対して加えられた拷問について書かれている。
彼はチェチェン人で、無実なんだけど、マスハドフと関係があったので、テロリストとしてやり玉に挙げられ(いわば、スケープゴート)、尋問の最中に、肋骨が14本折られたとか…。

こういう内容がひたすら続いていく、読むのが辛くなるような本。
だけど、プーチン政権をどう評価するかを考えるには、無視しておけない出来事ばかり。